来週の金融市場見通し(2020年3月2日~2020年3月6日)

■来週の見通し

新型コロナウイルスによる肺炎の世界的な感染拡大への警戒感が広がる中、米国でも「地域感染」の可能性がある事例が確認されたことなどから、投資家心理が急速に悪化し、NYダウは4日間で3,225ドル安と大幅な下落、米長期金利は過去最低を更新するなど、荒れた展開になりました。新型肺炎の収束が見えず、しばらくは不安定な相場が続きそうです。他方、景気の先行き不透明感を背景に米利下げへの期待が高まっており、利下げをめぐる米金融当局者の発言などにも注意する必要があります。

◆株価 :安値圏で推移か

日本株は、安値圏で推移しつつ、変動性の高まる場面が頻発しそうです。新型コロナウイルスに伴う肺炎が世界中に広がる中、各国の経済・企業業績に対する影響は不可避とみられます。これを投資家は極度に警戒し、株式などリスク資産から国債などへの逃避が加速しています。そのため、ウイルスの感染拡大が鎮静化し、各国の経済活動が平時の状態に戻るまでは、リスク資産への投資を積極化しにくい状況が続く見通しです。

◆長期金利 :低位もみ合い

新型肺炎の感染拡大への警戒が米国で一段と強まり、米長期金利は一時1.24%と過去最低を更新する中、国内の長期金利も一気にマイナス0.16%程度まで低下しました。投資家のリスク回避から安全資産とされる国債に資金が流入した格好です。米金融市場が3月の米利下げをほぼ100%織り込んできていることも、日米の長期金利を押し下げ。米長期金利の動向や金融政策をめぐる思わくなどに振らされながら、もみ合う展開になりそうです。

◆為替 : レンジ内で振らされやすい

現状、米国経済は欧州や日本と比して相対的に堅調なことから、ドルは基本的には底堅いと思われます。しかし中国で発生した新型肺炎はイタリアをはじめ、世界中に拡散しており、製造業や物流など実体経済に多大な悪影響が出ています。また、株価が世界的に大きく調整していることもあり、ドル円の上値は重く、レンジ内ながらも新型肺炎関連の情報に振らされながら、徐々に下値を探る展開となりそうです。

◆Jリート :金融市場の落ち着き待ち

東証REIT指数は大幅下落となりました。新型肺炎の感染拡大への警戒が一段と強まる中、内外の株価が急落したことで投資家心理が悪化し、これまで堅調な動きが続いていたJリートは、利益を確定する動きが一気に広がった格好です。景気の先行き不透明感は重しながら、Jリートの予想分配金利回りは3.8%強まで上昇し、長期金利との利回り差も4%に近い水準です。過度な売りが一巡すると押し目を拾う動きも出てきそうです。

来週の注目点

家計調査(1月) 3月6日(金)午前8時30分発表 

実質消費支出(二人以上の世帯)は、昨年12月に前年比4.8%減と、消費税増税後3か月連続の減少となりました。10-12月期の実質国内総生産(GDP)の大幅なマイナス成長(前期比年率6.3%減)も示すとおり、増税の影響は大方の予想を上回るものになっています。

1月の実質消費支出も、前年比減少が見込まれます。増税の影響は徐々に薄れるとみられますが、暖冬の影響で、冬物衣料の販売不振が続いている模様です。また、実質所得が伸び悩む中、少なくとも今年前半については、消費の基調的な弱さが継続しそうです。

米雇用統計(2月) 3月6日(金)午後10時30分発表

1月の米雇用統計において、非農業部門就業者数は前月比22万5,000人増と市場予想を大きく上回り、今後のインフレ動向を占う上で重要な平均時給は前年比3.1%上昇と賃金の伸びも3%台に持ち直しました。一方、失業率は3.6%と若干上昇したものの、半世紀ぶりの低水準にとどまっています。

雇用数の伸びは広範囲に及び、労働市場は堅調さを維持しており、引き続き個人消費は米国景気をけん引すると思われます。2月の非農業部門就業者数は前月比19万人程度の増加、失業率は3.5%、平均時給は前年比3.0%程度の上昇を想定しています。

 

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