来週の金融市場見通し(2019年7月8日~2019年7月12日)

■来週の見通し

米中首脳会談では、貿易協議を再開することで合意し、中国への追加関税「第4弾」の発動は見送られました。また、華為技術(ファーウェイ)への汎用品の一部輸出を認める方針が示されました。他方、欧州中央銀行(ECB)の次期総裁に金融緩和を支持してきたラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事が指名されたことなどから、主要国で利下げの動きが広がるとの見方が強まりました。市場の関心が金融政策に向かう中、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の半年に⼀度の議会証⾔が注目されます。

◆株価 : 方向感を探る

米中貿易摩擦への警戒が後退したことから投資家心理が大幅に改善し、日経平均株価は2か月ぶりの高値まで上昇、米国株は過去最高値を更新するなど、リスク選好が強まりました。ただ、米国や欧州の金融緩和観測から米長期金利が低下し、ドル安・円高が進行したことから、やや上値の重い展開に。来週は米中貿易協議の進展に加え、中国関連銘柄とされる安川電機の決算発表や為替の動きを確認しながら、方向感を探る展開となりそうです。

◆長期金利 : 金利低下は限定的か

長期金利は一旦上昇したものの、欧州や米国で金融緩和観測が強まったことを受け、じりじりと低下する動きになりました。市場予想を下回る米経済指標が相次いだことから、早期の米利下げ観測が強まり、米長期金利は一時1.94%とほぼ2年8か月ぶりの水準まで低下しました。米金利はすでに2020年まで4回程度の利下げを織り込んでおり、米長期金利の低下が限定的との見方が広がると、国内の長期金利の低下も鈍る可能性があります。

◆為替 : 米利下げ観測に振らされる展開

ドル円は、米中貿易協議の再開と追加の対中制裁関税の見送りを受け、安全通貨とされる円買いが後退し、一旦ドル高・円安に動きました。ただ、その後は米国で早期利下げ観測が広がり、ドル売り・円買いがやや優勢に。米雇用統計などで早期利下げ観測が一段と強まると、ドル円は低下余地を探る展開も想定されます。パウエルFRB議長の議会証言や米連邦公開市場委員会(FOMC、6月)の議事要旨も確認したいところです。

◆Jリート : 2,000ポイントをうかがう

東証REIT指数は、一時1,990ポイントと2015年1月以来の高値、配当込みの東証REIT指数は連日で過去最高値を更新。米中貿易摩擦への警戒が後退する中、長期金利の上昇が限定的だったことから、高い分配金利回りに着目した買いが継続した模様です。足元の予想分配金利回りは3.776%と、2015年1月高値時の2.887%を大幅に上回る水準。利益確定売りは警戒も、米利下げ観測が強まると上値を探ることも想定されます。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(6月) 7月8日(月)午後2時発表 

景気ウォッチャー調査の現状判断DI(季節調整値)は、5月に前月比1.2ポイント低下の44.1となりました。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下し、景況感の全般的な弱さが示された格好です。

今回発表される6月分についても、低下傾向が示される見込みです。家計動向関連では、10月の消費税増税を控えた節約志向の強まりや、4~5月の大型連休の反動もあり夏の旅行需要が伸び悩む見込みであることが、景況感を圧迫しそうです。また、企業動向関連では、米中貿易摩擦への懸念が製造業などの景況感を押し下げるとみられます。

米消費者物価指数(6月) 7月11日(木)午後9時30分発表

米国の消費者物価指数(CPI)は、5月に総合で前年比1.8%上昇、食品とエネルギーを除くコアCPIで前年比2.0%の上昇となり、それぞれ市場予想を下回りました。足元、ガソリン価格の下落が全体のインフレ抑制の主要因となっています。コアCPIでは中古車の価格が下落する一方、食品価格や住居費は若干上昇しています。

失業率が歴史的な低水準にあり、賃金は年3%程度の伸びを維持しているものの、インフレ指標は軟化の傾向であり、米連邦準備制度理事会(F R B)の年内の複数回の利下げが織り込まれつつあります。6月は総合CPIで前年比1.6%、コアで同2.0%程度の伸びを想定しています。

 

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