欧州への警戒は杞憂に終わるのか?

2018/06/01

5月最後で月跨ぎとなる今週の国内株市場ですが、軟調な展開が目立っています。30日(水)の取引では日経平均が22,000円を下回る場面もありました。先週のあたまの日経平均は23,000円台に乗せていましたので、1週間ちょっとで約1,000円下げたことになります。これまでの株価の戻り基調が目立った調整がないままに継続してきたことも売りに拍車をかけたのかもしれません。

 

足元の相場下落のきっかけとなったのはやっぱり「あの人」こと、トランプ米大統領でした。米朝首脳会談の中止を表明したり、自動車の輸入関税の引き上げ検討を指示するなど、話題を立て続けに振りまいてくれました。ただし、米朝首脳会談については、その後に再び開催される流れになったほか、自動車の関税についてもすぐに実行されるわけでもないため、相場に与えるインパクトはあったものの、今後も下げ材料となり続けるのかは今後の動向次第になるのですが、今週はさらに欧州発の不安(イタリアやスペイン)が新たに加わりました。

 

とりわけ、市場ではイタリアの政治情勢が不安の種となっているようです。現在のイタリアは、いわゆるポピュリズムで躍進した政党(五つ星運動)と、EU懐疑派の極右政党による連立政権の樹立を目指していたのですが、首相や組閣がなかなかまとまらない状況となっていて、再選挙が実施される可能性が高まってきました。再選挙によってポピュリズム政党や極右政党がさらに躍進する結果となれば、反EUや積極財政への動きが加速します。イタリアは多くの公的債務を抱えていることもあって、これが警戒されているという構図です。

 

もっとも、31日(木)の日経平均は反発して取引がスタートしました。前の晩の海外市場で、ユーロ安やイタリア国債利回りの上昇(国債売り)が一服したことを受けてのことですが、このまま相場が落ち着きを取り戻すのかは微妙なところです。米ドルに対するユーロ安傾向は4月の下旬から始まっていますが、米国金利上昇を受けての動きだけでなく、ここにきて、欧州の政治不安を反映したものとして意識される可能性が出てきた点には注意が必要かもしれません。また、週末には米雇用統計が控えているほか、来週末はメジャーSQが予定されているため、しばらくは値動きの荒い展開が想定されます。

 

 

 

 

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