来週の金融市場見通し(2025年12月29日~2026年1月9日)

2025/12/26

■来週の見通し

米国の2025年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比4.3%増と、市場予想の3.2%増を大きく上回りました。個人消費がけん引した格好です。国内では三村財務官や片山財務相による円安けん制発言を受け、円買い介入が意識されることになりました。内外の経済指標に加え、日銀金融政策決定会合の「主な意見」、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨なども確認しながら方向感を探ることになりそうです。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の後任人事も確認したいところです。

◆株価 :年初は波乱の展開も

今週の日本株は、底堅い動きとなりました。前週の日銀の金融政策決定会合後の記者会見で、植田総裁が追加利上げを急がない方針を示したことで、市場の安心感が広がり、週初は買いが優勢となりました。その後は、海外市場がクリスマス休暇に入り、市場参加者が少ないなかで方向感に乏しい展開となりました。

年初の相場は、波乱の展開になる可能性があります。米国では、米連邦準備理事会(FRB)の新議長人事が明らかになる可能性があるほか、ロシアとウクライナの戦争終結に向けた交渉が進展する可能性があります。そのほか、市場が予期していないイベントが発生する可能性もあります。年初の株式市場は、イベントを受けて、上下に大きく変動する可能性があり警戒が必要です。

◆長期金利 :一進一退か

今週の長期金利は、円安進行を受け日銀が早期の追加利上げを迫られるとして国内債には売りが膨らみ、一時2.10%と1999年2月以来の水準まで上昇しましたが、高市首相が新規国債の発行額に関して「抑制的にできるかもしれない」と話したことなどから、財政拡張への過度な警戒感がやや和らぎ、上昇幅を縮小しました。

年末年始は、日米の金融政策をめぐる思わくに振らされそうです。トランプ政権は1月初旬にもFRB議長の後任人事を公表すると報じられており、利下げに積極的な人物が指名されると、米金利とともに国内金利にも低下圧力がかかる可能性があります。国債発行計画で超長期債の発行が減額され、10年債の増額が見送られたことは長期金利の上昇を抑制しそうです。日銀の主な意見、10年国債、30年国債入札なども確認したいところです。

◆Jリート :上値の重い展開か

今週のJリート市場は、上昇しました。前週末の日銀の追加利上げを受けて長期金利が上昇したことで、週初から下落しました。その後、長期金利の上昇が一旦落ち着く中、下げ幅を縮小したものの、週末に再び反落しました。今週末の分配金利回りは4.541%(東証上場REITの予想分配金利回り、QUICK算出)となりました。

年末年始のJリート市場は、長期金利の動向をにらみつつ、上値の重い展開を想定しています。東証REIT指数(配当なし)2,050ポイント付近では一定の戻り売りが見込まれるほか、過去最大の2026年度予算案を背景とした財政悪化懸念により長期金利が上昇すると、Jリート市場を下押ししそうです。一方、値下がりした局面では下値を拾う買いや分配金利回りに着目した買いが期待されることから下値も限定的になると見込んでいます。

◆為替:やや神経質な動き

今週のドル円は、日銀が利上げを急いでいないとの思わくから一旦157円台に上昇したものの、三村財務官が円安進行について「行き過ぎた動きには適切な対応をとりたい」、片山財務相が「断固として措置を取る」と述べたことなどから円買い介入への警戒感が強まり、155円台半ばまで下落しました。ただ、週末には財政悪化への懸念から円売りが優勢になり、下げ幅を縮小しました。

年末年始は、やや神経質な動きが続きそうです。FRB次期議長に、よりトランプ氏に近い人物が指名されるとFRBの独立性が損なわれるとの懸念からドルが弱含むことも想定されます。また一段の利下げが意識されるとドル円の上値が抑えられる可能性があります。為替介入への警戒もドル高・円安を抑制しそうです。FOMC議事要旨、日銀の主な意見なども確認したいところです。

◆米国株 :年初は波乱の展開も

今週の米国株は、底堅い動きとなりました。消費者の景況感に関する経済指標や労働市場の減速を示唆する経済指標の発表を受けて、来年もFRBが利下げを継続するとの見方から、買いが優勢となりました。

年初の相場は、波乱の展開になる可能性があります。FRBの新議長人事が明らかになる可能性があるほか、ロシアとウクライナの戦争終結に向けた交渉が進展する可能性があります。労働市場や製造業の景況感に関する経済指標の発表も予定されています。そのほか、市場が予期していないイベントが発生する可能性もあります。年初の株式市場は、イベントを受けて、上下に大きく変動する可能性があります。とくに、人工知能(AI)に関する新しい材料が出てくると、半導体関連株は振れ幅が大きい展開となる可能性があり、警戒が必要です。

来週の注目点

毎月勤労統計調査(11月) 18日(木)発表

毎月勤労統計調査によると、10月の実質賃金は前年比-0.8%と、10か月連続で減少しました。名目賃金は同+2.5%上昇したものの、食料品価格の高騰などで物価がそれ以上に上昇していることから、賃金の上昇が物価の伸びに追いつかない状況が続いています。

11月の実質賃金は、物価の高止まりが続くなかで、マイナス圏での推移が続く見通しです。最低賃金の大幅な引き上げがパートタイム労働者の賃金を押し上げる要因になるとみられますが、適用時期が11月以降となる都道府県も多いため、10月時点での影響は限定的とみられます。

米雇用統計(12月) 19日(金)発表

米雇用統計によると、11月の非農業部門雇用者数は前月差+6.4万人増と、市場予想を上回りました。前月と比較すると、政府部門の減少幅が大きく縮小したほか、民間部門の雇用者数は増加幅が拡大しました。他方、失業率は4.6%と21年9月以来の高い水準となりました。平均時給は前月比+0.1%増、前年比+3.5%増と、ともに前月から伸びが鈍化しました

12月の非農業部門雇用者数は前月差+5.5万人増、失業率は4.5%、平均時給は前月比+0.3%増程度を想定しています。

図表、スケジュール入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/weekly/02/

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