株価上昇と市場ムードとのギャップ
「アフター米雇用統計」となった今週の株式市場ですが、その米雇用統計の結果がサプライズとなったことで、週初4日(月)は大きく下落するスタートとなりました。
この日の日経平均は、一時4万円台を下回る場面があったもののすぐに持ち直し、その後も下落基調が本格化することなく、持ち直す日が続く展開となっています。また、TOPIXについては、7月24日につけた最高値超えをトライする動きになっているなど、日本株の堅調さが印象的です。
ただし、相場を取り巻く環境は必ずしも良好とは言えません。先日、合意に至った日米関税交渉では、時間の経過とともに両者のあいだに食い違いが目立ち始めていて、この先も「思っていたのと違う」という場面が増えそうなことや、政治的な理由でブラジルやインドに対して追加分の関税が上乗せされるなど、トランプ米大統領が不満を抱いた際には、追加で関税が課される可能性が燻っていること、分野別関税についても、半導体分野での実施がトランプ米大統領から示唆されるなど、米国の関税政策をめぐる動向は、関税交渉の合意を経ても不透明感が燻っている格好です。
さらに、米国株市場の動きも微妙になってきています。NYダウやSOX指数(半導体関連銘柄で構成される株価指数)は50日移動平均線、S&P500とナスダック総合は25日移動平均線がサポートになる格好で、株価の反発基調を辿っているものの、先週までの最高値をうかがう展開からはややトーンダウンしています。
その背景にあるもののひとつとして、先ほどの雇用統計をはじめとする米国の経済指標で、景気の減速を匂わす結果となるものが増え始めていることが挙げられます。もちろん、景気減速の兆候は、米金融政策の利下げ観測を高めることにつながり、現在もこうした利下げ期待が相場を支えている面があると思われます。
ただし、来週の米国では、消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)、輸入物価指数などのインフレ関連の経済指標の発表が予定されています。仮に、米国のインフレが加速、もしくは高止まりしている結果となった場合、「景気が減速しているのに利下げしにくい」状況となり、最近まで鳴りを潜めていたスタグフレーションへの警戒感が高まる可能性があります。
反対に、インフレが鈍化する結果となった場合には、利下げ期待が高まることになって、株式市場の初期反応はポジティブになりそうですが、今後も景気の減速がより進行してしまった場合には、米FRBの利下げペースが市場の想定しているマイルドなもの(0.25%ずつ利下げ)ではなく、0.5%など、利下げ幅が大きくなることも考えられます。この場合、「FRBが対応に遅れた」ということになり、株式市場のムードがネガティブに傾き、景気減速が一時的にとどまるのか、それともある程度継続しそうなのかを見極めて行くことが想定されます。
確かに、「相場は不安の崖を登っていく」という格言もありますが、今週の国内株市場は、週末8日(金)がオプション・mini先物取引のSQ日が控えているため、需給的な思惑が絡んで株価が想定以上に上昇している可能性もあります。そのため、無理に上値を追うのではなく、下がったところを拾うというスタンスで相場に臨むのが良いかもしれません。

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