株価の推進力は「ムード」から「具体的な成果」へ

2025/05/09

今週の国内株式市場ですが、大型連休明けで迎えた7日(水)の取引では、値動きが連休前と比べて小幅ながらも、日経平均が8日ぶりの反落、TOPIXが9日続伸となり、連休中の海外株市場とのギャップはあまり生じなかった印象です。

また、値幅があまり出なかった割には、この日の東証プライム市場の売買代金が4兆9,167億円と比較的多くなっていますが、これについては、米FOMC(連邦公開市場委員会)というイベントを前にしたポジション調整および短期的な売買が行われている可能性や、企業決算やセクターローテーションなどの個別物色の動きが増えていたことなどが考えられます。

先月(4月)の半ば以降、国内外の株式市場は株価の戻り基調を描いてきましたが、その背景として、関税政策や米中関係をはじめとする米トランプ政権の対応に軟化の兆候が見られ始めたことで、景気後退やインフレ再燃など、実体経済に多大な影響を及ぼすといった「最悪のシナリオ」が回避できるのではという安心感が広がったことが主な要因として挙げられます。

さらに、粘り腰を見せている米経済指標の結果から、米国経済の堅調さが確認できたほか、日米で本格化している企業決算でも、全体的に売上高や利益などに大きな落ち込みがなく、併せて自社株買いを打ち出す企業も多かったことなども追い風となりました。

実際に、日経平均の日足チャートでも、足元の株価は25日移動平均線を上抜け、節目として意識される37,000円台や75日移動平均線の回復も視野に入るところまで株価水準を戻していることが確認できます。米国株市場でも、主要株価3指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合)の株価が、いずれも200日移動平均線をうかがうところに位置しています。

とはいえ、株式市場がこのまま戻り基調を辿れるかどうかは微妙なところかもしれません。こうした株価反発の根拠になっている「安心感」には、危うさも抱えています。

例えば、米経済指標の堅調さの背景として、関税適用前の「駆け込み」が影響していることが考えられますが、その反動が今後の経済指標の結果に表れる可能性があります。第一関門の米4月雇用統計は無難に通過しましたが、月の半ばには4月分の物価指標(消費者物価指数と卸売物価指数)や小売売上高などが公表される予定となっています。

また、米国が各国と行っている関税交渉では、米国当局から「今週中にいくつかの国と合意に至る見込み」と発表されてはいますが、5月7日時点ではまだ合意に至っている国や地域はなく、さらに、10日~11日にかけては、スイスで米中協議が行われる予定となっています。ただ、「期待先行」による株価反発は、そろそろ限界を迎えつつあり、今後の交渉に時間が掛かってしまうと、それだけ関税の影響も色濃く出ることになるため、今後も株価を上昇させていくには、なるべく早い段階で「具体的な成果や材料」が求められます。

さらに、関税政策をめぐっては、5月に入り、映画や医薬品とった分野別の関税を検討する動きも出てきています。確かに、トランプ米大統領による対応が軟化しつつあるような動きも見られていますが、「関税強化による貿易赤字削減と国内産業の保護」を優先させるという基本的な姿勢は変わっておらず、関税政策が軽減されることはあっても撤廃される見込みは低いため、先行きの不透明感が相場を覆う状況は、まだしばらく続くことになりそうです。

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