まだ始まったばかりの「トランプ相場」

2025/01/24

週初の20日(月)にトランプ新大統領が正式に就任し、「トランプ政権2.0」のスタートで迎えた今週の株式市場ですが、初期反応はこれまでのところ良好となっています。

休場明けの21日(火)の米国株市場は主要株価3指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)が揃って上昇したほか、国内株市場でも日経平均が20日(火)と21日(水)で続伸となり、株価水準も4万円台を射程圏内に捉えるところまで引き上がっています。

こうした株価上昇の背景として、就任前に警戒されていたトランプ大統領の関税政策について、就任演説の内容などから、「(市場が)思っていたよりも踏み込んだものではなかった」と受け止めたことが主因として挙げられます。確かに、21日(火)の国内の取引時間中に、カナダやメキシコに対しては2月1日に関税をかけるべく調査を始めたと報じられ、日経平均が下落に転じる場面があったものの、少なくとも「すべての国に一律に関税を賦課する」という懸念はひとまず後退したと言えます。

こうした安心感に加え、トランプ氏が米国内で巨額のAI投資が行われる旨を表明したことも追い風となりました。「スターゲート」と呼ばれるAI開発の共同出資事業が、ソフトバンク・グループやオープンAI、オラクルの3社を中心に行われることになり、今後4年間で5,000億ドル投じられるほか、技術面ではエヌビディアやマイクロソフトとも連携、そして、10万規模の雇用増も見込まれるというもので、これを受けた、22日(水)のソフトバンク・グループの株価は10%超の上昇となり、その影響は他の関連銘柄にも波及しています。

このように、株式市場の反応から見ると、今のところ順調な滑り出しの印象となっている「トランプ政権2.0」ですが、まだまだ始まったばかりであり、中長期的にこの基調が続くと考えるのはやや早計かもしれません。

一般的に、相場は先行きを見据えながら動いて行きますが、「どこまで先の時間軸を見て行くか?」となると、トランプ大統領の発言や大統領令、政権運営の動向によっては、相場のムードがガラリと変わる可能性は低くはなく、あまり遠い時間軸で見て行くのは難しく、しばらくの間は、「その都度出てくる材料に短期的に反応する」といった短期的な相場展開が続くことになりそうです。

今回のトランプ大統領の就任演説では、関税政策に対する踏み込んだ話が出なかったことが好感されましたが、演説ではもうひとつ、「減税政策」について語られなかったことについても、不透明な材料として注目する必要があります。

トランプ政権に対する市場からの課題として、「減税と財政改善をどう両立させていくか?」というのがあります。この点については、財務長官への就任が議会で承認されたスコット・ベッセント氏が提唱する「3・3・3政策(財政赤字をGDP比3%に削減、規制緩和でGDP成長率を3%に押し上げ、日量3百万バレルの原油増産でインフレ抑制)」が課題をクリアするのではという期待がある一方、果たしてそれが現実的なのかどうか、再来週の2月に入ると始まる米議会での連邦政府の予算議論である程度、見えてくることが見込まれます。

そのため、目先の株式市場はさらなる上昇も見込めそうですが、足元で本格化している企業決算で好調な内容と明るい見通しが続かない限り、次第に勢いがなくなってしまうことも想定しておく必要があるかもしれません。

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