米国経済の「ソフトランディング」見通しは揺らぐか?

2024/02/23

今週の株式市場ですが、21日に控えた米半導体企業エヌビディアの決算を前にして、足踏みの展開が目立ち、先週末の16日には史上最高値にあと一歩まで迫った日経平均もひとまず「お預け」の格好となっていました。その米エヌビディアの決算ですが、売上高・利益・業績見通しが揃って好調なものとなり、同社株は時間外取引で大きく上昇し、それを受けた22日の取引でも日経平均が再び最高値トライを意識するスタートするなど、市場の初期反応は良好だったと言えます。

また、昨年11月からはじまった日米株式市場の上昇トレンドですが、昨年10月末を基準にして、日米の主要株価指数(日経平均、TOPIX、NYダウ、S&P500、NASDAQ、SOX指数、ラッセル2000)を比較すると、21日時点で3つの特徴が見られます。

まず、米半導体銘柄で構成される「SOX指数」の上昇が際立っていること、続いて、米国の中・小型株で構成される「ラッセル2000」がNYダウよりやS&P500よりも上昇していること、そして、TOPIXが出遅れているように見えることです。

とりわけ、ラッセル2000を構成する中・小型銘柄は、企業の規模が大きくないため、景気や金利の動向に敏感に反応しやすいという特徴があるのですが、そのラッセル2000が強い動きを見せているということは、米国経済の強さを背景にした「ソフトランディング」見通しに自信を持っていることの表れと考えられます。

一般的に、米国がソフトランディングに成功したのは、1966年、1984年、1995年の3回とされています。いずれも、「最初の利上げ開始から3年間、景気後退入りを回避したこと」、「その期間中に利下げから利上げに転じたこと」などがその根拠とされています。

もっとも、過去においては、米国の利下げ開始から間もなくして景気後退入りしているというケースも多く、果たして今回は利下げ後にどっちに転ぶのかが注目されるのですが、市場では今のところ、ソフトランディング成功の見通しが優勢のようです。

ただし、米GDI(国内総所得)に注目すると、前年比でマイナスに沈むタイミングでもれなく景気後退しているという傾向があるのですが、足元ではマイナスに沈んでいるため、注意が必要です。ちなみにソフトランディング成功時のGDIはプラス圏で推移していました。

国の経済規模を示す指標としてはGDP(国内総生産)が有名ですが、GDIは所得面から捉えた指標です。理屈の上ではGDE(国内総支出)とともに3つが等しくなるとされています。生産されたものは支出され、それが分配されて所得となる流れですので、豊かさの実勢により近いのはGDPよりもGDIと言えます。

所得面でみた米国経済(GDI)がマイナスになったことをはじめ、先週発表された米1月CPI(消費者物価指数)やPPI(卸売物価指数)が予想以上に強く、インフレの高止まり警戒が燻っていること、同じく先週発表された1月小売売上高も予想よりも弱かったことなど、米国消費の強さの原動力とされる消費が揺らぎ始めている可能性があります。

もちろん、現時点ではまだ不安視しなくても良さそうですが、こうした傾向が来月も続いてしまった場合には、相場のムードが変わるかもしれないため、注意しておく必要がありそうです。

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