それでも株価は上昇して行けるか?

2023/12/08

今週の株式市場ですが、日経平均は続落で始まり、5日(火)には節目の33,000円台を下回る動きを見せた後に、翌6日には前日比670円高となり、今週に入ってからの下げ幅を一気に取り戻すなど、やや荒っぽい値動きとなっています。

こうした状況は、国内株市場では週末のメジャーSQを前に需給的な思惑が働きやすいこと、米国株市場でも、週末に注目の11月雇用統計が控える中で、米金利の低下に反応する格好で指数寄与度の大きいグロース株に資金が向かったことなどが背景にあります。

来週も米国では、FOMC(12日~13日)や11月消費者物価指数(12日)、11月小売売上高(14日)などの注目イベントが予定されており、株価の値動きが大きくなる場面が増えることになりそうです。

となると、仮に目先の株式市場で再び上昇を見せた場合、このまま中期的な上昇トレンドへとつながるのかが気になるところですが、足元の市場の楽観ムードとは反対に、そのハードルは意外と高いかもしれません。

その理由として、いくつか挙げられますが、まずは、テクニカル分析で捉えた値動きです。米S&P500を例にすると、最近までの株式市場は、夏場から秋口にかけて下落して10月に底を打ち、11月に大幅反発を見せましたが、こうした「10月底打ちから急反発」する値動きパターンは昨年(2022年)と一昨年(2021年)にも見られました。

2022年は年初からの下落トレンドの終盤のタイミング、2021年はコロナショック時の安値(2020年3月)からの長い上昇トレンドの終盤というタイミングという相場局面の違いはありますが、両者ともに、12月に入ると11月からの株価上昇がいったんストップし、株価が下落して調整する場面が訪れていたことを踏まえると、このままの流れで積極的に上値を追うのは注意が必要です。

また、株高をもたらしている米国の金利低下傾向ですが、その要因として、(1)「米景気の減速とソフトランディング見通しによる利上げ終了観測と利下げ期待の先取り」、(2)「米国財政をめぐる議会の対立がいったん回避」、(3)「米国債需給悪化懸念の後退」の3つが挙げられます。

メインとなる(1)の見方については、足元の株式市場でまだ優勢ではあるものの、(2)については、米政府のいわゆる「つなぎ予算」の期限が1月19日と2月2日に訪れるほか、(3)についても、次回の米国債の発行計画が2月あたまに公表されることもあり、年をまたいで警戒感が高まる可能性があります。

ここから先の株価がさらにもう一段階上昇していくには、すでに材料として織り込んでいる米金利の低下だけでは力不足の面があり、「買い戻しによる株価上昇」から、「先高観による買い騰がり」の材料が必要になります。

そのためには、企業業績がしっかり成長できるかが焦点になるわけですが、ソフトランディング見通しであるとはいえ、米国でもある程度の景気減速が想定されていること、そして、景気減速や感染症の拡大、国債の格下げ見通しが公表されるなど、多くの課題を抱えている中国リスクも横たわっていることを踏まえると、年内に株価が再上昇した際の上げ幅や賞味期限が短くなってしまうことは想定しておいた方が良いかもしれません。

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