米景気の「ソフトランディング」見通しは波乱含みか?
今週の株式市場ですが、日経平均は32,000円台割れでスタートした後に持ち直し、方向感を探るような展開となっています。
一方の米国株市場についても、先週の長期国債の格下げに続き、今週は地銀を中心に一部の金融機関の格下げが発表されるなどをきっかけに、下げる場面が増えながらも、株価水準的にはまだ高値圏を何とか維持しているような格好です。
最近までの米国株市場は、長期間にわたって燻ってきた急ピッチな利上げの影響による景気後退懸念への不安が後退し、「ソフトランディング」への期待が高まる中で、株価を上昇させてきました。もちろん、景気減速の兆しが全くないというわけではありませんが、「ローリング・リセッション」という言葉があるように、業種や分野ごとに不況の訪れるタイミングにズレが生じることで、結果的に全体の景況感はあまり悪化しないというのが、ソフトランディング見通しの背景にあります。
とはいえ、こうしたソフトランディング見通しは「危うさ」も抱えています。先ほども触れた一連の格下げについては、これまでのところ、相場の方向感をガラリと変えるほどのインパクトを与えてないように見えます。1段階格下げされたとはいえ、米国債は最も安全とされる資産のひとつであるため、格下げそのものによる米国債利回りの上昇は限定的になると思われます。ただし、機関投資家は米国債以外にも社債などを保有しているため、全体のリスクバラン調整のために、低格付けの社債が売られることが考えられます。そのため、時間をかけて企業の資金調達コスト上昇などの影響が出てくるかもしれません。
また、前回のコラムでも触れたように、ソフトランディング見通しの強まり自体が、利上げ観測を強めたり、景気悪化を織り込んで「逆イールド」となっている債券市場の修正を迫る格好となって、長期債が売られて、利回りが上昇するなどの金利上昇圧力につながってしまう一面を抱えています。このほか、QT(量的縮小)によって、FRBという米国債の買い手がいなくなることや、債務上限問題によって減少した資金を調達するために、今後は米国債の増発が見込まれていることなども、米金利の上昇要因として意識されることも想定されます。
さらには、米国経済を支えてきた消費の源泉となっていた、コロナ禍での給付金(コロナ貯金)も、今秋以降に底をつくとされており、実際に、4-6月期のクレジットカード債務の延滞率が7.2%と11年ぶりの高水準まで上昇するなど、消費の減速にも注意する必要があり、ソフトランディング見通しに基づくトレードは今後、波乱含みになるかもしれないことは意識しておいた方が良いかもしれません。
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