「次の上昇相場」のハードルは?

2023/07/21

連休明けで迎えた今週の国内株市場ですが、これまでのところ、戻り基調が目立っています。

テクニカル分析的には、目先の日経平均が25日移動平均線や33,000円台の節目を上抜けできるかが焦点になり、達成できなかった場合には、いわゆる「リターン・ムーブ」の動きとなって下落が進行する可能性があります。特に25日移動平均線については、前回(6月下旬)の下落局面で支持(サポート)して機能していたこともあり、今度は抵抗(レジスタンス)となってしまうと、相場が下方向への意識が強まる可能性があります。

とはいえ、足元の株式市場は米国株を中心に強気を取り戻しつつあるような印象です。先週公表された米6月CPI(消費者物価指数)でインフレ鈍化傾向が確認されて、「年内にあと2回も」が想定されていた利上げ観測が後退したこと、米大手金融機関の良好な決算が相次いでいること、さらに、生成AIについても、米マイクロソフト社とメタ・プラットフォームズ社が協業でサービスを開始すると発表したことで再び相場のテーマとして浮上したことなどを受け、米主要株価指数(NYダウ・NASDAQ・S&P500)が揃って年初来高値を更新しています。

本格化しつつある企業決算シーズンや、月末かけて控える金融政策イベント(米FOMCや日銀金融政策決定会合)の動向次第では「次の上昇相場」の展開も期待でき、日本株もその流れに乗れば一段高の展開もありそうです。

その一方で、足元では気掛かりな点もあります。そのひとつとして挙げられるのが中国です。今週17日(月)に、4~6月期GDPをはじめとする6月の経済指標のほか、不動産大手企業の恒大集団が2年分(2021年12月期・2022年12月期)の決算をようやく公表しました。

前者のGDPについては、前年同期比で6.3%増でしたが、前年の中国でロックダウンされていたことの反動が寄与した面が大きく、同時に発表された他の経済指標と併せて、中国経済の冴えない状況が確認されたほか、後者の中国恒大集団の決算についても、債務超過に陥っていることが判明しました。決算の数字自体は、21年12月期に大きく落ち込み、翌22年12月にやや持ち直すような見せ方となっており、「最悪期は過ぎた」印象を与えるような感じですが、債務超過額の大きさや、抱えている資産(販売中や建設中の物件など)の評価が低下する可能性を踏まえると、実質的な破綻状況にあると言えます。

また、恒大集団以外にも似たような状況の不動産企業が存在すると思われ、中国経済の先行きに慎重にならざるを得ず、米中対立の動向も含めて、中国と関係のある国内企業の決算や業績見通しへの影響が注目を集めそうです。

また、足元で低下傾向となっている米金利についても注意が必要かもしれません。足元ではインフレや景況感が金利を動かす主なファクターとなっていますが、それ以外にも、米国では債務上限問題で不足している米政府の現金をファイナンスするために、今後はかなりの規模の国債の発行が見込まれます。FRBがQTを続けていることや、日本や中国の米国債の保有額が減少していること、秋には米商業用不動産の借り換えが増えると見込まれため、需給的な要因で金利が上昇することも考える必要があります。

そのため、難しい相場展開がしばらく続くことになりそうです。

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