ちょっとした「カオス相場」の株式市場

2023/07/14

今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は軟調な動きが目立っています。12日(水)には節目の32,000円台割れの31,943円で取引を終えています。

直近の高値でもある月初7月3日の終値(33,753円)からは1,800円を超える下げ幅となったほか、直近安値(6月27日の32,306円)も下回っています。テクニカル分析的には、25日移動平均線を下抜け、6月19日と7月3日の高値を起点とする「ダブル・トップ」の形成も指摘されており、相場はいったん天井をつけたという見方が強まっている印象です。

とはいえ、日々の取引時間中の値動きを見ると、プラス圏に転じる場面も見られ、まだ売りと買いがせめぎ合っている様子がうかがえるほか、今週は週末にオプション取引・mini先物SQを控え、需給的な思惑で振れ幅が大きくなっていることも考えられ、このまま下落トレンド入りを判断するのはまだ早いと思われます。

また、足元の相場環境は中期的にも短期的にも動きづらく、ちょっとした「カオス相場」となっています。

まず、中期的にはこれから本格化する日米の企業決算シーズンをはじめ、月末にかけては米FOMCや日銀金融政策決定会合といった金融政策イベントが予定されています。特に、金融政策については、米国では「早ければ年内にも利下げ」から「年内にあと2回の利上げの可能性」へと変わったほか、日本でも日銀副総裁によるインタビュー記事でYCC(イールド・カーブ・コントロール)修正の言及があったことで、当面は続くと思われた金融緩和姿勢に揺らぎが生じるなど、金融政策の前提が大きく変わっているため、注意が必要です。

短期的にも、先週公表された米ADP全米雇用レポートと雇用統計とで非農業部門の雇用者数に大きな開きがあったほか、国内でも、強かった先週の日銀短観と、減速感も出てきた今週の景気ウォッチャー調査など、直近の日米の経済指標で景況感の見方が交錯しており、方向感が掴みにくくなっています。

さらに、米国では株価指数のリバランスが意識されることも、株価の上昇を抑えている面があります。米ナスダックは先週、主要ハイテク企業を中心とする100銘柄で構成されるナスダック100指数のリバランスの実施を発表しました。上位の数銘柄で指数ウエイトの半分以上を占めるなど、特定銘柄への過度な集中に対処するのが目的で、14日に詳細が発表され、24日の取引開始前に実施される予定です。これにより、投資ファンドなどはポートフォリオの調整を余儀なくされることが予想されます。

そのため、目先で振れ幅の大きい展開があったとしても、それが一時的にとどまる可能性があり、カオス相場を抜けて新たな動きが出始めるのは、決算シーズンと金融政策イベントの見極めを織り込み始めたタイミングになると思われ、しばらくは不安定な相場展開が続きそうです。

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