日本株の「上値追い」と「買い場探り」

2023/06/09

今週の国内株市場ですが、日経平均が週初の5日(月)に32,000円台に乗せるなど、これまでのところ、株価水準をもう一段階切り上げる展開となっています。

とはいえ、5日(月)が418円、6日(火)が600円、7日(水)が794円といった具合に、1日の日中値幅(高値と安値の差)が大きい日が続いているほか、6日(火)が高値引けになったかと思えば、翌7日(水)が安値引けとなるなど、値動きが少し荒くなっています。

週末に控えるメジャーSQをにらんでの思惑が影響していると思われますが、これまでの日本株が急ピッチで上昇してきたこと、そして足元の値動きの荒っぽさを踏まえると、目先は株価の調整局面を迎えて買い場を探るのか、それとも、このまま上値追いの流れに乗るべきなのかについて判断が難しくなってきた印象です。

現時点では、「上値追い」シナリオも「買い場探り」シナリオも、どちらもあり得る状況ですが、この点について考える際に、押さえておきたいポイントが2つあると思われます。

ひとつめは、「日本株上昇の原動力」です。日経平均は4月半ばの28,000円水準から直近の32,000円水準までほぼ右肩上がりの上昇基調を描いてきましたが、5月前半の30,000円水準までの上昇は、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の発言効果や、東証が旗振り役となっている低PBR企業への改善要請など、どちらかと言えば日本株再評価の動きが主導していました。

そして、5月半ばからの上昇については、米国から吹いてきた「生成AI」をキーワードにしたIT・半導体関連銘柄物色の追い風や、短期筋を中心とする先物買いが主導する格好となっており、株価の上昇自体は連続していますが、その背景が微妙に変化している点には注意が必要です。となると、足元の相場が調整を迎えた場合、日経平均がもみ合いを見せた31,000円台で下げ止まれるかが焦点となります。

ふたつめは、「米国の景況感」です。直近の米国株市場の地合いは、懸念されていた債務上限問題が峠を越えたほか、次回の米FOMCでは利上げのいったん「スキップ」が織り込まれ、グロース株が伸び悩んでも、景気敏感株や中小型株が物色される動きを見せるなど、かなり良好となっています。

ただし、米国の景況感の悪化に対する警戒は昨年からずっと燻り続けていますし、前回のコラムでも指摘しましたが、経済指標の中には景気後退局面時に現われるような結果となるものが散見されている割には、米国株市場は崩れていません。いわば、多少の景況感悪化の兆候が出現しても、緩和マネーがカバーしている面があるといえます。実際に、コロナ禍による金融緩和と財政出動によって、米FRBのバランスシートはほぼ倍増しています。

引き続き、米金融政策はQT(量的引き締め)の継続が見込まれている状況ですので、緩和マネーの縮小に伴って、景況感の悪化が顕在化していく可能性を意識していく必要がありそうです。先日の米5月雇用統計では失業率が予想以上に上昇しましたが、過去の米失業率の推移を遡っていくと、失業率の低下が底を打ち、上昇傾向に入ったタイミングでもれなく景気後退局面を迎えています。

したがって、目先は積極的な上値追いよりも、買い場を探るスタンスが中心になるかもしれません。

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