バフェット氏はいつ日本株を追加購入するのか?

2023/04/21

今週の株式市場ですが、これまでのところ、日経平均は高値圏での推移が続いています。19日(水)の取引では前日比で下落に転じ、連騰記録は18日でストップしてしまいましたが、節目の28,000円台は一応キープしていますので、しばらくは日米の決算動向をにらみつつ、利益確定売りと押し目買いが綱引きをしながら株価水準を探っていく展開が想定されます。

また、足元の日本株には追い風も吹いています。先日、新たに就任した植田日銀総裁が今月10日の就任会見で「現行の金融緩和の継続方針」を強調したことによる安心感や、インバウンド効果による景気刺激、東証が旗振り役となって進めている低PBR企業への改善要請期待、そして、先日に来日した、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株の追加投資を検討している旨の発言があったことによる日本株の再評価の機運などが挙げられます。

とりわけ、バフェット氏については、すでに日本の商社株を購入・買い増ししてきたことが知られており、今回の同氏の発言によって、「次のバフェット銘柄を探せ」的な動きも出てくるなど、市場でも大きな話題となっています。今後も日本株を支える材料となりそうで、仮に米国株市場が大きく下落したとしても、日本株には下値で買いが入りやすいという見方もあるようです。

しかし、意識しておきたいのは、同氏の基本的な投資スタンスが、「長期の視点で、かつ株価が割安の時に株を仕込む」という点です。となれば、自らの発言で株価を吊り上げるようなことはしにくいと考えられ、同氏が日本株を追加購入するのは、株価が堅調な今ではなく、軟調となったタイミングと思われます。

そのため、同氏が株式を購入するタイミングとして考えられるのは、「日本株だけが一人負けしている局面」、「米国をはじめとして世界的に株価が下落している局面」のどちらかとなります。前者については、そもそも日本株に魅力がない状況ですので、普通に考えれば後者となります。

ちなみに、2000年以降の米国の過去のリセッション局面は、ITバブル崩壊時(2000年3月~2002年10月)、リーマン・ショック時(2007年10月~2009年3月)、コロナ・ショック時(2020年3月~2020年4月)となりますが、いずれも日米の株価が大きく下落しています。今後、こうした大きなリセッションや、株価の上値が伸び悩む場面が訪れれば、バフェット氏は日本株を購入してくると思われます。

直近の米国株市場では、リセッション(景気後退懸念)がくすぶりながらも、主要株価指数が3月の金融不安前の水準を回復し、高値圏に位置しています。また、「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数も低い水準にとどまっています。

本来であれば、米金融機関が抱える問題(中小銀行の預金流出、保守的な姿勢による融資の滞り、保有資産の損失など)の影響や、夏場に訪れる「財政の崖問題」への警戒感を考慮すると、もう少し慎重になっても良いはずなのですが、実際には楽観ムードが少し強い印象となっています。今年が米大統領選挙の前年であり、選挙を意識した経済政策期待への思惑が働いているのも、微妙に相場のムードを支えていると思われます。

したがって、今後しばらくの株式市場は強い動きを見せるかもしれませんが、楽観ムードがいつ暗転してもおかしくはないこと、そして、日本株の支援材料となっているバフェット氏の発言は、必ずしも日本株の上値をトライする材料ではないことの2点は意識しておく必要がありそうです。

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