相場の展望シナリオは再構築の途中
今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は不安定な値動きとなっています。ウクライナ情勢に揺さぶられる相場地合いが続いていますが、ウクライナをめぐる国際世論や株式市場のシナリオには変化も見られ始めています。
変化が現れ始めたのは、ロシアが先週ウクライナへの武力行使(侵攻)を開始したあたりからです。それまでの株式市場は、米国の急ピッチな金融正常化に伴う影響を警戒していたこともあって、マイナス(下向き)の相場地合いとなっていました。これにウクライナの地政学的リスクというマイナスの材料が加わる格好となったため、普通に考えれば、下げ幅が拡大していく展開が想定されますが、侵攻開始の第一報を受けた株式市場は下落で反応したものの、ほどなく反発する動きを見せました。
過去の相場の経験則では、地政学的リスクは「有事の買い」が有効だったことや、株式市場がすでに売り込まれていたこともあって、買い戻しに勢いが出やすかったことも先週末にかけての株価上昇につながったと思われます。
さらに、地政学リスクの警戒感が高まることで、米国の金融政策の引き締めペースを緩めさせて株価を支えるのではという期待も浮上しています。実際に、パウエル米FRB議長が今週の議会証言において、再来週のFOMCでの利上げ幅が0.5%ではなく0.25%となる見込みであることが示唆されました。
つまり、マイナス材料どうしの「足し算」によるマイナス幅拡大ではなく、一部の期待による「掛け算」でプラスになったという面があります。また、ロシアの軍事侵攻と西側諸国の経済制裁の影響が懸念され、資源価格などが上昇していますが、事態が長期化すれば、景気減速の圧力となってインフレも鎮静化していく可能性があります。ただし、先週末に見せた株式市場の反発の勢いは限定的なものとなっており、その背景にはウクライナ情勢の見通しが次第に不透明感を強めていることが挙げられます。
先日までは、ロシアが安全保障の枠組みをめぐる要求を通すために軍事的圧力をちらつかせながら譲歩と落としどころを探るという状況だったのが、ロシア軍の侵攻が始まり、それに対するウクライナのゼレンスキー政権が徹底抗戦の構えを示したあたりから、国際世論はウクライナの自主と独立を脅かすロシアへの批判ムードへと傾き、ロシアが想定していたと思われる以上の経済制裁や各方面からの圧力が強まっています。ロシア側も強硬姿勢を崩しておらず、今後どのように事態が収拾していくのかの道筋がまだ見えていません。
米国の金融政策についても、次回のFOMCで0.25%の利上げが実施されると可能性が高くなりましたが、以降の利上げやQT(量的引き締め)については、「流動的なウクライナ情勢と景気動向を見ながら判断」というところになりそうです。そのため、短期的にさらなる戻りトライの展開もありそうですが、中長期的には相場の見通しシナリオの再構築を探ることになり、下落局面も増えることが考えられます。
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