中国の住宅価格低下が意味するもの
今週の株式市場ですが、最大の注目イベントだった、米FOMC(連邦公開市場委員会)を境に一気に同意づいてきました。弱含みで推移していた日経平均はFOMCの結果を受けた16日(木)に29,000円台を回復する勢いでスタートしています。
このまま年末株高を迎えるかについては、日経平均では75日移動平均線超えから三角保ち合いの上放れ、米NYダウは36,000ドルの節目突破、米NASDAQは25日移動平均線の上抜け、米S&P500については、11月22日につけた取引時間中の高値超えなど、「テクニカル分析のハードル」を越える必要があります。もっとも、これらのハードルは決して高いものではなく、期待したいところです。
その一方で、今週の15日(水)は中国で11月分の経済指標がまとめてドンと発表されましたが、その結果を見ると、中国経済が「踊り場」に差し掛かっているような印象となっています。
具体的に見ていくと、前年比では、工業生産が3.8%増(予想:3.6%増・前回:3.5%増)、小売売上高が3.9%増(予想:4.6%増・前回:4.9%)、固定資産投資が5.2%増(予想:5.4%増・前回:7.2%増)となり、工業生産以外は、伸びが鈍化していることがうかがえる結果となりました。
この中で小売売上高については、自動車販売が伸びなかったことが影響した模様ですが、11月は「独身の日(11月11日)」呼ばれる一大セールイベントがあった時期だけに、今回の結果はやや意外だったかもしれません。また、固定資産投資の鈍化についても、中国恒大集団をはじめとする中国不動産企業の債務問題が影響しているかもしれません。実際に、同日発表された中国の新築住宅価格も、6年ぶりの大幅下落となっており、中国GDPで寄与度の高い不動産セクターの落ち込みの影響が今後の中国経済の重石となるのかが気掛かりです。
とはいえ、住宅価格が下落すること自体は、「中国当局がやろうとしていることと一致している」面もあります。来年の共産党大会で3期目の国家主席就任の準備を進めている習近平政権は、いわゆる「共同富裕」というスローガンを掲げています。その中には、普通に働いても買えない程に上昇してしまった住宅価格をはじめ、教育や所得などの格差を修正することが盛り込まれています。経済指標の結果からすれば、住宅価格の低下は特に驚くことではないという見方もできます。
問題なのは、地域によって違いはあるものの、住宅価格が一般の人が手に届く価格にするには、まだまだ下がり続ける必要があり、となると、投資目的で不動産を購入する人は、価格の上昇が見込めないため、不動産投資のマネーが一気に縮小してしまうことも考えられます。しかも、不動産業は債務問題への対処も迫られていることもあり、より苦境に立たされて、お金が回らなくなり、中国経済全体に波及して、景気減速のピッチを速めてしまうことが懸念されます。
先日開催された、中央経済工作会議では、「経済の安定性」が強調されており、介入や締め付けが中心だった政策が修正される方向に向かうと思われます。ただ、安定性を強調すること自体、中国当局の描いていたシナリオ通りでないことの裏返しである可能性があり、足元の不安定な事態を上手くコントロールできるかが今後の焦点になりそうです。
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