決算期の株高シナリオも、中長期の見通しは不透明

2021/10/22

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、先週からの流れを引き継いで戻り基調が続いています。

足元では、日経平均が年初来高値をつけた914日(30,795円)から直近安値の106日(27,293円)の下げ幅の「半値戻し」を8営業日で達成したわけですが、最近の日経平均は、年初来安値(820日)から年初来高値(914日)までの上昇が18営業日、先ほどの直近安値までの下落が14営業日となっていることもあり、短期間での株価の上げ下げが慌ただしくなっています。

先週からの相場地合いは、米国の長期金利の落ち着きをはじめ、堅調な経済指標や企業決算期待を背景にした米株市場の上昇を受けて、日本株にも買いが入っている格好です。とりわけ、企業業績への期待は根強く、情報ベンター(QUICK・ファクトセット)の集計では、米主要500社の7-9月期の純利益は前年同期比で28%増になる見通しとなっており、現在不安視されている、インフレの長期化をはじめ、サプライチェーン(供給網)の混乱、不動産セクターの債務問題や当局の介入による中国経済減速などの不安に抗っている印象となっています。

また、個別銘柄でみれば、今週のトヨタ株が強い動きを見せています。確かに同社はサプライチェーンの混乱を理由に、11月の世界生産を減産させると発表しましたが、減産幅が縮小傾向にあるため、「最悪期は脱した」と受け止められたことや、4-6月期(第1四半期)の業績の進捗率が高いこと、そして直近の円安による業績上振れ期待などが買い材料となっています。

日米ともに決算シーズンが本格化していきますが、業績の中身が良いことに加え、不安材料(インフレやサプライチェーン)に対する強さの度合いによって、銘柄の選別が進みそうです。買われる銘柄とそうでない銘柄が分かれることになるものの、全体としては株価の一段高という見方が優勢なようです。

気掛かりなのは、暖房需要増が見込まれる冬場を迎えるにあたって、資源価格の高止まりが続き、インフレ傾向が落ち着かないことや、中国の動向です。後者の中国については、今週あたまに7-9月期GDPをはじめ、9月の工業生産や小売売上高といった経済指標がまとめてドンと発表され、中国経済の減速傾向が浮き彫りとなったのですが、国内外の株式市場は、ほぼスルーといってよいほど薄い反応でした。

ある程度の減速は想定内だったことや、中国当局の対応期待がその原因とされていますが、現在の中国の状況は、債務問題の動向による経済への影響や電力不足、そして何よりも当局が今後どういう手を打ってくるのかが読み切れず、「不確実性が強く、現時点ではリスクとして織り込めない」という面もありそうです。

中国では、来月(11月)の上旬に「6中全会」(第19期中央委員会第6回総会)が開催されますが、それに先立ち、習近平主席は先週、共産党の理論誌「求是」に公表した論文で、固定資産税の導入や消費税の適用範囲拡大に言及しています。これらが実現すれば不動産セクターに大きな影響を与えます。もちろん、経済を支える政策も打ち出してくると思われますが、現在の状況は、中国当局の行動が招いたことも一因となっているため、注意する必要があります。

しばらくは、中長期のシナリオが描きにくい中、決算動向で株価が動く場面が増えそうです。

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