米FOMCの初期反応のウラにあるもの

2021/06/18

今週最大の注目イベントである米FOMCを受けた17日(木)の国内株市場は、下落して取引をスタートさせました。同じくFOMC後の米株市場が下落した流れを受けた格好です。 

そのFOMCやその後に開かれたパウエル米FRB議長の記者会見では、あらためて現状の金融政策の維持を強調したほか、ワクチン接種による新型コロナウイルスの感染拡大状況が改善していることで、「コロナ危機が経済の重石になっている」という文言が声明から削除されました。足元で懸念されている物価上昇についても、「一時的」という見方も崩しませんでした。

ただ、市場が反応したのは、同時に公表されたFRBメンバーによる経済・金利見通しの方です。とりわけ、金利見通しについては、回答した18人のうち、過半数の11人が23年に少なくとも2回の利上げを想定していることが示されました。3月開催のFOMCでは24年以降の利上げが想定されていただけに、「思ったよりも早く利上げが始まるのでは」と受け止められ、これによって米10年債利回りが上昇しました。

確かに、FOMCを受けた市場は売りの初期反応となりましたが、利上げの想定は来年(22年)をすっ飛ばした先で、金融政策面における米国市場の時間軸の視点はかなり遠いと言えますし、また、足元の物価上昇が一時的なのか、それとも継続的なのかは専門家や市場関係者のあいだでも見方が分かれているため、今後の経済指標等を粘り強くウォッチしていく必要があります。そのため、「見極めが困難であるうちは、テーパリング(金融緩和縮小)の議論は急がないだろう」という見通しに変わりはないと考えられます。

実際に、今回のFOMCで相場の流れに大きな変化は生じないだろうという前提で、今週はじめの取引では、日米の株価が上値をトライしていました。FOMC後の売りは利益確定の動きが加わったことで下げ幅が大きくなった面もありそうです。さらに、日本株についても、相場の時間軸の視点が、まだワクチン接種進展による出遅れ修正の方を向いていると思われます。

したがって、FOMC後の初期反応は比較的早い段階で落ち着いてきそうですが、一応、米FRBの利上げのスタンスが、「インフレによる混乱を避けるために、今までよりも予防的に動く」方向を強めたかもしれないことは把握しておく必要はありそうです。

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