日銀のETF買いへの思惑と相場の落ち着き

2021/05/21

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、28,000円台を挟んで大きく上げ下げを繰り返す値動きとなっています。先週の日経平均は3日間で2,000円超の下げ幅を見せていただけに、まだ落ち着きを取り戻しきれていないのかもしれません。

また、こうした不安定な相場地合いの背景のひとつとして需給的要因が挙げられます。例えば、先週の急落によって発生した、信用取引や先物取引の追証解消やポジション整理の動きや、日銀のいわゆる「ETF買い」などです。とりわけ、日銀のETF買いについては色々な憶測を呼んでいます。というのも、「日銀のETF買いのルールが分からなくなってしまった」面があるためです。先週はあれだけの急落局面でも日銀はETF買いを行っていません。

確かに、日銀自体はETF買いの基準を公表してはいませんが、ここ数年のあいだは、株式市場とのあいだに、「前場のTOPIX0.5%以上下落すると買いを入れる」という暗黙の共通認識がありました。ルールや下値の目安が分かれば、押し目買いが容易になりますので、これによって市場にある程度の安心感を与えていました。 

ところが、今年の2月あたりからこのルールに当て嵌まらないことが増え、かつての「1%ルールに戻したのではないか?」という見方で固まりつつあったものの、420日の前場のTOPIXが 1.25%下落したにも係わらず、日銀がETF買いを見送ったことで、1%ルールも不確定になってしまいました。 

もっとも、日銀ETF買い期待が芽生えにくくなったことで、株価が下げるべきところできちんと下がり、買われるべきところで底打ちするといった、市場の「価格発見機能」が正常化に向かうというメリットもあります。ただ、その一方で、 「どこまで下げたら日銀はETFを買うのか?」を探りに行く思惑的な市場の動きも想定できてしまいます。 

今年127日の参議院予算員会で黒田日銀総裁は、「ETF買いによる含み益が約13兆円で、日経平均ベースでの損益分岐点は21,000円程度」と発言しています。日銀が現在の株価水準でETFを増やせば、さらに株価が上昇しない限り、含み益が減少し、損益分岐点も上昇していきます。今後の日銀が金融政策の出口戦略を模索するのであれば、むやみにETF買いを連発しないことが考えられます。 

日銀のETF買いは201012月から始まり、2021518日時点で677回のETF買いを行っています。それぞれの買い入れを日経平均の価格帯で整理すると、16,000円台~23,000円台の価格帯で全体の70%(468回)を占めており、24,000円台からの買い回数は17回にとどまっています。しばらくのあいだは日銀の動向と意図が注目されることになりそうです。

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