足元の株価急落は久々の大幅調整となるか?

2021/05/14

今週の国内株市場ですが、これまでのところ、日経平均は株価水準を切り下げる展開となっています。週初の10日(月)は上昇し、25日移動平均線を回復して戻りを試しそうなムードで始まったものの、翌11日(火)には前日比で900円を超える下落を見せたほか、12日(水)も上昇から一転して大幅続落となりました。さらに、予想以上に強かった米国の物価関連指標を受けて、13日(木)も下落で取引が開始しています。週末のオプション取引・mini先物取引のSQを控えた需給的な思惑も絡んでいるものと思われます。

 先週のイエレン米財務長官による「米経済が過熱しないように金利を少し上昇せざるを得ないかもしれない」という発言をきっかけに、物価上昇と金利上昇への警戒感が高まったわけですが、先週末の米4月雇用統計が予想を大きく下回る結果となったことで、こうした警戒感はひとまず後退したかのように見えたものの、結果的に懸念が燻り続けていることになります。

米雇用統計では、非農業部門雇用者数の結果が予想の100万人程度に対して、26.6万人と大きく下回ったことで、「急いで金融緩和を縮小しなくても良い」という期待につながったのですが、別の見方をすれば、米国経済が急ピッチで正常化に向かう中、弱い雇用情勢は所得増につながらず、購買力が減退して、いずれ物価上昇が重荷になってくる可能性もあると言えます。

また、これまでIT・ハイテク株を中心とするグロース株が売られる場面では、バリュー株や景気敏感株が受け皿となり、米NASDAQが軟調でも米NYダウやS&P500が堅調な動きとなっていましたが、両指数とも今週に入って最高値をつけた後は軟調に転じており、今回の下落が押し目買いのチャンスとなるかが微妙になりつつあります。今後も、物価上昇とそれに伴う金利上昇が警戒され続ければ、株式市場の調整が比較的大きなものになるかもしれません。

一般的なセオリーとして、リスクが取れるあいだの資金は基本的に「儲かりそうなところ」へ流れ、リスクオフとなれば「安全なところ」に流れていきます。グロース株売りの受け皿となっていたバリュー・景気敏感株は、すでに割高が感じられるところまで買われていることや、成長性を先取りして買い上がる銘柄でもないため、選択肢が狭まっています。まだリスクが取れるのであれば、仮想通貨やコモディティなどに向かうことも考えられますが、その一方で安全資産の金価格が上昇し始めていることもあり、リスクオフのムードが強まっている面もあります。

そのため、足元の株価急落が久々の大幅調整となるかが注目されている状況と言え、最近まで織り込んでいなかった悪材料をいったん織り込んだ後に相場が持ち直すことが出来るのかが試されることになりそうです。

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