「適温相場」に向かいつつある米国株について行けない日本株

2021/04/09

今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均・TOPIXともに25日移動平均線を意識する展開が続いています。特に日経平均については週初に節目の3万円台を回復したものの、早い段階で失速しており、慎重さや弱含みの印象となっています。
その一方で、米国株市場に目を向けると、上値の重たさは感じられるものの、NYダウとS&P500が史上最高値圏で推移し、NASDAQについても戻り基調を強めています。
こうした米国株市場の強さは、想定以上に進んでいる新型コロナウイルスワクチン接種に伴う米経済正常化期待をはじめ、経済指標の強さや企業業績期待といったファンダメンタルズの良好な状況、そして金融緩和の継続観測といった景気への楽観がつよまり、ここ最近警戒されてきた米長期金利が1.7%を下回って推移しており、急ピッチな金利上昇への不安が後退したことが背景になっています。
足元の日本株は、この米国株市場の流れについて行けない場面が増えているわけですが、新型コロナウイルスの変異種の感染拡大や、ワクチン接種も大きく出遅れている日本国内の状況を踏まえると、大きく出遅れていると言わざるを得ず、こうした「コロナ対応力の差」は非製造業の回復度合いに現れ始めています。
実際に、先週の4月1日に公表された日銀短観では、大企業製造業の景況感(DI)が、コロナ前の水準に回復しているものの、非製造業についてはまだまだ低水準にとどまっています。そのため、景気敏感株への物色対象が幅広い米株市場とは異なり、日本株は海外で稼ぐ企業がより選好されそうなど、銘柄の選別が進むことになり、相場全体の底上げが限定的になってしまうことも考えられます。
また、「適温相場」に向かいつつあるように見える米株市場も、巨額の米経済政策はコロナ禍によって生じた需給のギャップに対して大き過ぎるという見方も根強く、急ピッチな経済回復による供給不足がインフレ圧力を招く可能性もあり、米金利上昇への警戒は燻り続けることになります。強すぎる経済が却ってネガティブに働いてしまう展開には注意が必要です。
まもなく日米の決算シーズンが本格化していきますが、先取りしてきた期待と現実のギャップが意識されることが想定されます。企業業績の動向が材料出尽くしとなるか、さらなる上値追いのきっかけとなるかがポイントになりそうです。まだ中長期的な強気を崩す必要はなさそうですが、目先の調整入りのタイミングには警戒しておいた方が良いかもしれません。

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