米株市場の下落は「健全な調整」にとどまれるか?

2020/09/11

今週の国内株市場ですが、これまでのところ株価水準を切り下げる動きとなっています。先週の終盤あたりから急落した米国株市場の急落の流れを受けている格好ですが、それでも日経平均が23,000円台を維持しているなど、底堅さも見せています。とはいえ、6月からの日経平均のチャートを眺めると、いわゆる「窓」を空ける場面が多く、米国株市場に振り回されやすい状況が続いています。

その米国株市場は今週9日(水)の取引で反発しており、いったん下落が落ち着きを見せています。これを受けた10日(木)の日経平均も23,193円と上昇して取引をスタートさせていますが、焦点となるのは最近の米株急落が「健全な調整」にとどまったのかどうかです。

確かに、最近までの米国株市場はそろそろ調整局面が来てもおかしくない状況でした。とりわけ、8月に入ってからは、企業決算の通過や、抗コロナウイルスのワクチン開発や治療法認可への期待、FRB(米連邦準備制度理事会)によるゼロ金利政策の長期化観測が強まったことなどを背景に株価の上昇が加速し、NASDAQやS&P500が連日で史上最高値を更新するなど、過熱感を指摘する声も多くありました。

また、先週は米雇用統計といった経済指標のほか、NYダウの銘柄入れ替えが実施されたり、アップル株の分割や期待されていたテスラ株のS&P500銘柄採用が見送られたほか、米ネット証券のロビンフッドに対してSEC(米証券取引委員会)が注文処理の開示をめぐって調査に入ったと報じられたり、米ハイテク株の急騰の影にソフトバンクグループの関与が報じられるなど、タイミング的にも売りの口実に事欠かない材料がたくさんありました。

実際に、米NASDAQの本格的な調整入りの目安とされる下落率10%あたりで反発しているため、今のところは「健全な調整」の範囲と考えることができますが、前回のコラムでも指摘した通り、9月中旬以降は、米FOMCやTikTokの米国事業売却交渉期限、1回目の米大統領候補討論会など、注目イベントも多く、積極的に上値を追いづらい状況が続きます。

さらに、英製薬会社のアストラゼネカが抗コロナウイルスワクチン治験を安全性の懸念から一時中断するとの報道から、ワクチン開発で経済の早期回復というシナリオが後退したことや、さらなるハイテク株上昇を見込んだ様々な買いポジションがひとまず解消に向かう動きを見せるなど、これまでの「買いのサイクル」に変調がみられはじめている点には注意が必要です。

冷静に状況を眺めると、現実の状況は大きく変わっていないものの、市場の思惑だけが先行して株価がふらついている局面です。こういう場面では個別で特異な動きを見せる銘柄が出てくることが多く、しばらくは「森よりも木」の短期的な取引が注目されそうです。

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