中国の景気減速に対する懸念と期待
連休明けとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ軟調な展開が目立ち、17日(水)の取引で21,500円の節目を下回っています。また、終値ではクリアしたものの、この日の取引時間中には25日・75日の2本の移動平均線を下回る場面も見られました。最高値圏にある米国株市場の流れにイマイチ乗り切れていない印象です。
確かに、日本株の上値を抑えている要因は数多くあります。週末の政治イベント(参議院選挙)待ちや、国内企業決算に対する見極めムード、米株上昇の背景となっている利下げ期待に伴う為替の円高警戒などが挙げられますが、日本が祝日で休場だった15日(月)に発表された中国4-6月期GDPの結果も影響を与えていると思われます。前年同期比で6.2%となり、リーマン・ショック直後につけた値(2009年1-3月期の6.4%)も下回ったほか、四半期ベースの統計で遡れる1992年以降で最低となっています。
また、中国は「2020年のGDPを2010年時から倍増させる」という経済目標を立てていますが、その達成には年平均6.2%以上の成長が必要とされていますので、最低ラインは何とか維持した格好です。GDP発表後の中国株(上海総合指数)は軟調気味で反応しているものの、大きく相場が崩れていないのは、今後もGDP成長の目標を死守するために、中国当局がさらなる経済政策を打ってくるだろうという期待感が支えている面もありそうです。
とはいえ、中国は米中摩擦の進展に伴い、すでに補助金支給や減税、金融緩和など、数多くの経済政策を打っています。そのことを踏まえると、株式市場が景気の再浮上までの期待を織り込んでいくのは難しいですし、財政出動や金融緩和は、債務問題の深刻化という代償を伴う「諸刃の剣」でもあります。中国全体の債務残高(家計や企業、政府部門の合計)は、対GDP比で300%を超えていると言われていますが、これは世界全体の債務の約15%に相当します。
また、今回のGDPの内訳をみてみると、外需のプラス寄与度が大きくなっています。外需は輸出から輸入を差し引いて計算されますが、米中摩擦の影響で輸出が伸びているわけではなく、内需の低迷で輸入が減ったことが大きな要因です。また、中国人旅行者のいわゆる「爆買い」が減速し、サービス貿易の赤字が縮小したことも外需のプラスに貢献しています。裏を返せば、外需の強さは中国国内の景気減速を反映している面があります。
引き続き、中国経済の行方は米中摩擦の動向がカギを握ることになりますが、現時点では長期化の見通しが強くなっています。当初は「長期戦となれば、強力な政治基盤を持つ中国側が有利」とされていましたが、事態の長期化や債務問題の圧力にどこまで中国景気が持ちこたえられるかという視点で捉えると、認識されているほど中国は余裕がないのかもしれません。
その一方で、李克強首相が外資の出資規制を緩和する方針を打ち出すなど、財政出動だけでなく経済改革に着手していく動きも一部で見られ始めていることは明るい材料です。対外的な市場の開放やビジネス環境の整備は、海外から多くの資金を中国に資金を呼び込みやすくなるほか、米国が中国に求めているものでもありますので、米中摩擦の改善のきっかけになることも考えられます。
今後は中国の市場改革の拡大とスピードが焦点になるのかもしれません。
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