米中関係の新たな火種になるかもしれない「香港の大規模デモ」の行方
今週の国内株市場はこれまでのところ、比較的しっかりした足取りを辿っています。日経平均は週初に節目の21,000円台を回復し、その後も25日移動平均線を意識しつつ何とか維持しています。
警戒されていた米国によるメキシコへの関税引き上げが見送られたほか、米FRBによる利下げ期待、中国の経済政策(インフラ投資を目的にした地方債の使途制限を緩和)などが好感され、ひとまず戻りをうかがう展開に転じた印象です。
一方の米中関係については今月末のG20サミットに向けて、色々と慌ただしくなっています。中国がレアアースの輸出規制の検討が本格化し、米国もこのG20で首脳会談が行われなければ、関税引き上げ「第4弾」を実施すると息巻いているなど、日々のニュースのヘッドラインによって、緊張の高まりと緩和が繰り返され、市場のムードを左右しています。
そんな中、先週末の9日と今週の12日に、香港で大規模なデモが行われました。その理由は香港政府が審議している「逃亡犯条例」改定への抗議活動です。この逃亡犯条例は、国を跨いで逃亡した犯罪者の引き渡しを定めたもので、この条例が成立してしまうと、特定の犯罪容疑者を香港から中国本土に送還できるようになります。
言い換えれば、香港にいる全ての人が中国本土の司法制度の影響を受けることになります。香港政府は、「犯罪者の引き渡し対象は禁錮7年以上を科されるなどの深刻な犯罪だけであり、集会や言論の自由に関連した犯罪は対象にならない」と発表していますが、それでも中国政府によるでっち上げの容疑によって、香港市民や外国人の引き渡しを求められかねないとの懸念が香港の内外で根強く燻っています。現在の香港政府は中国当局の介入もあり、行政長官や議会など親中派で固められています。
当初、この改定案は12日から審議が行われ、20日に採決される予定だったのですが、12日のデモによってひとまず審議が延期されました。今後の具体的なスケジュールは未定ですが、改定案が強行可決されるのか、そしてその時に想定される大規模デモへの扱いをどうするのか(力づくで抑え込むのか)など、香港政府とその背後にある中国当局の対応が注目されることになります。今月4日は六四天安門事件から30年という節目だっただけに、政治問題には敏感なタイミングでもあります。
米国が敷いた中国企業の華為技術(ファーウェイ)への圧力包囲網は、欧州などを含めて足並みがイマイチ揃っていませんが、今回の香港の政治問題については、中国当局の対応次第では人権や民主主義の観点から国際的に多くの国が中国に対して批判的なスタンスを取り、中国が孤立してしまう可能性があるほか、香港に対する「一国二制度」の前提が崩れかねないため、香港の国際ビジネス環境も転換点を迎えることにもなってしまいます。台湾との関係にも含めて安全保障にも影響が出るかもしれません。
そのため、中国は米中関係だけでなく、香港についても「強気と譲歩のバランス」が試されることになりそうです。
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