いかに市場内部要因(=非ファンダメンタルズ)が、市場を乱すのか
【ストラテジーブレティン(211号)】
突然の乱気流、茫然自失の投資家・専門家、したり顔の悲観論者
ファンダメンタリスト(ファンダメンタルズを調べている専門家)のほとんど誰もが予想していない突然の市場崩落が、今年に入って2月と10月の2回も起こった。10月月初から米国株式は10%、日本株式は14%の下落となった。日米はまだいいほうで、新興国株式、欧州株式の下落はさらに大きかった。
これほどの急落が起きたからには、ファンダメンタルズに深刻な根拠があるに違いない、との見方が急速に台頭している。その懸念は現状では100%否定はできない。しかし取りざたされている、実体経済、政治などに関する懸念は、①米国金融情勢の変化(利上げと長期金利の上昇)、②米中貿易戦争、③中東情勢波乱、原油価格上昇懸念、④米国中間選挙の帰趨と大統領弾劾の可能性、などであるが、いずれも米国景気拡大を遮断するほどのインパクトがあるとは思えない。2019年に米国経済後退が起きると予想しているエコノミストは、株価急落の前も現在もほとんどいないなのではないか。米中対決もさらに熾烈化する可能性は小さい。WSJ紙は中国がイラン産原油の11月分の輸入手続きを行っておらず、米国のイラン制裁に同調しはじめた、と報じている(10.26.18)。米中協議が進展する兆しと考えられる。
リーマンショック以降米国株式は何度か10~15%前後の調整を経験したが、ギリシャ発ユーロ危機、バーナンキショック、中国ショック、ブレクジット、などいずれも実体経済政治面での不確実性と不安に直面していた。それに対して今年の2回の株式急落は、実態面での不安度がさして高まっていたとは、考えられない中で起こった。あえてファンダメンタルズの問題を探せば半導体の変調、中国投資関連の不振(例えば対中工作機械受注)、中国自動車販売の落ち込み、原油価格低下とエネルギー株への負の影響、金利上昇によるグロース株(=高PER)の価格調整などが指摘できるが、いずれも大局を動揺させるものではない。とすれば、犯人は市場内部要因と考えるほかはない。