トランプ政権の本質、保護主義ではなく帝国主義~守りではなく攻撃~
【ストラテジーブレティン(177号)】
誤解されるトランプ政権~孤立・保護・差別主義ではない
トランプ政権の戦略目標は単純明快で分かりやすい。①強いアメリカ、②安全な世界、③強い国内雇用、④それらを阻んでいる不公正(a.他国の過小な軍事負担と米国の不適切な対外関与、b.米国に不利な通商産業政策・為替政策、c.不適切な移民・難民政策)の是正、である。
それなのに、トランプ氏は人々の不満に訴える選挙戦術として、④の不公正の是正を特に強調した。またトランプ氏を快く思わないメディアも①、②、③を全く看過し、④のみをトランプ氏の過激発言と絡めて報道した。そのために、トランプ政権の事実とは異なるイメージが定着している。つまりaの従来の国際軍事戦略に対する不満が孤立主義と受け取られ、bの通商産業政策の不満が保護主義と受け取られ、cの難民・移民政策に対する不満が人種・人権差別主義ととらえられている。
しかし、①強いアメリカ、②安全な世界、③強い国内雇用を実現するためには、孤立主義や保護主義が全く逆効果であることは論を待たない。また世界で最も民主的な米国において、過激な差別主義が定着するとは思われない。トランプ政権の政策の成長進化、メディアの曲解是正により、トランプ政権の3つの負のイメージ(孤立主義・保護主義・差別主義)は急速に是正されていくはずである。
確認された対外関与の強化
2月10~11日の日米首脳会談において、トランプ大統領は日米同盟の意義を強調し、米国が対外関与を薄めるという孤立主義的誤解を大きく解消した。トランプ政権の軍事力増強計画、力による平和戦略(Peace through Strength)はむしろ対外関与を強化するものである。また、多国間ではなく2国間の通商交渉により、米国に不利な不公正さを是正するというトランプ政権の政策も、保護主義と言うべきではあるまい。安倍首相が日米首脳共同記者会見でいみじくも「国有企業による国家資本を背景とした経済介入はあってはならず、知的財産のただ乗りは許されない」と指摘したように、中国に極端にみられる不公正通商慣行の是正は保護主義とは真逆のモノである。