米国利上げと中国の権力闘争 ~目先、中国ハードランディングの可能性が小さくなったようだ~
【ストラテジーブレティン(167号)】
米国の利上げをめぐって思惑が錯綜し、金融市場におけるリスク感、不透明感が強まっている。しかし真の不確実性は米国ではなく中国経済に存在しており、投資におけるリスクも中国経済と金融市場をどう評価するかにかかっている、と思われる。どう転んでも米国経済の固有の見通しは明るく、それを覆すとすればグローバル要因特に中国の展開次第と言う側面が強いのではないだろうか。その観点から、習近平主席の権力基盤が弱まり、中国の経済運営がより透明で国際協調路線が明確な李克強路線に純化される見通しが強まったことは、明るい材料である。李克強路線により中国のハードランディング、人民元急落の可能性が(目先的には)大きく軽減されるとすれば、2017年は米国金利上昇、ドル高の下で株式も堅調と言う、リスクテイク促進型の環境になると予想される。
不確実性小さい米国
金融市場の関心事はFRBの利上げに集中し、金融政策を占う材料である経済データの発表とFRB幹部の発言に、一喜一憂する日々が続いている。しかし少し観察スパンを長くとれば、米国経済の不確実性は驚くほど小さい。ほぼ明白と言っていい事実をざっと挙げると、
1) ほぼ完全雇用達成
2) 物価も2%接近、コアPCEデフレーターなどに不満は残ってもデフレ陥落の可能性は著しく低下
3) 景気拡大の後半戦、a) 労働分配率上昇⇒企業はコストアップを価格転嫁する必要性強まる⇒よりインフレ圧力へ b) 企業における資本余剰低下(設備投資増加、自社株買い・配当などの社外流出による)
4) 2017年より財政出動へ、トランプ・クリントン候補共に。などが指摘できる。