長期展望、日経平均長期上昇シナリオは終わったのか?
【ストラテジーブレティン(148号)】
ミラー*: 『長期展望、日経平均長期上昇シナリオは終わったのか?』ということでお話を伺いたいと思います。今、この不確実な中で、世の中どのように見ていったらよろしいでしょうか?
長期展望、確かな3つのメガ・トレンド
武者: この不確実な中で、世の中をどのように見ていったらいいのか。中国情勢の展開は予断を許さない。非常に大きな不確実性・不透明性がある。但し、そういう時期には、わからないことはわからない、しかし、確かなことは確かということを、きちんと分けることが必要だ。確かにわからないことは沢山あるが、ほぼ確実なメガ・トレンドというのもある。このメガ・トレンドをベースとして、色々な物事を考えていくと、将来の輪郭が浮かび上がってくるであろう。
第一のメガ・トレンドは、米国の力強い経済回復、長期繁栄、これは変わらない。人々は懐疑的だが、米国が再び世界のスーパーパワーとして力を取り戻すという局面が、非常に近い将来やってくる。これは、ほぼ間違いないと思われる。リベラルデモクラシーのリーダー、世界金融の中心かつインターネット・情報化革命の最先端でイノベーションが起こっている米国の将来は明るい。
第二のメガ・トレンド、それは日本の復活である。世界の他の国の名目GDPが3倍、4倍と成長する中で、日本だけが名目GDPが過去20年間、500兆円と全くの横ばい、まるで麻痺にでもかかったように成長が止まり、失われた20年となった。他の国がどんどん成長している中で、日本の時代は終わったように見られていたけれども、この日本が20年間の雌伏を超えて、大きく復活・飛躍しようとしている。これは、もう間違いないトレンドだろう。
今後の世界成長の推進力は中国主導の(開発独裁による)モノの成長から、より民主主義的な下からの需要創造、生活の質の向上にフォーカスした成長モデルになる。それは技術、品質、安全、快適といった要素に限りない価値を置く、発展のパターンであり、雌伏の20年の間に、日本が古いモデル(導入・模倣技術と価格競争を上からの開発独裁的手法によって成し遂げた)から抜け出し、新たに確立したモデル(品質・技術優位、customer satisfactionに対する忠誠)によって提供する財、サービスが大きく価値を高める時代となるだろう。
いずれ議論したいが地政学的観点からも、中国の時代の終焉は日本のプレゼンスが高まる時代と言っていいと思われる。
そして三つ目のトレンドは中国の衰弱、そして新興国の中に大きな下剋上が起きるということである。過去10年間の世界経済の最大のサプライズは中国の劇的な台頭であったが、いよいよこの中国の台頭が終焉し、衰弱した後、一体誰が埋めていくのかという新しい国際分業の姿が、模索されていくと思われる。ということは、中国が衰弱したから世界がダメになるということではなくて、中国の代わりに新たなプレーヤーが生まれる。