安倍さん、これじゃ駄目だ
【ストラテジーブレティン(89号)】
昨日の政府日銀の共同声明は、中身のないものであった。「2%のインフレ目標と2014年からの無期限の資産購入」、つまり今年中何も変わらない。1%の物価のめどすら達成がおぼつかない中での期限を決めない2%のインフレ目標は「無」に等しい。
そうした形だけの声明を「画期的」(安倍首相)「歴史的」(甘利経済財政・再生相)と評価している、安倍政権にも呆れる。やはりと言おうか、日銀法改正を回避するための官僚の作文によって、結果を作るコミットメントが棚上げされた。市場は失望して円高株安にもどったが、失望はそれにとどまらない。安倍政権がかくもたやすくだまされ、お茶を濁すとは!! これまでの掛け声倒れを繰り返す可能性が高いことを、強く感じさせてしまったのである。安倍政権に対する信頼が陰り始めていくことを、真剣に憂慮するべきだ。
かくなるうえは、次期日銀総裁と日銀法改正に焦点が絞られなければならない。日本と米国の違いは、中央銀行首脳の覚悟の違いにある。バーナンキFRB議長は、「デフレは害悪でありそれは金融政策で回避できる。打つ手はいくらでもある」と主張し、市場の想定を超える政策を打ち出し、市場の期待をリードし、人々のアニマルスピリットを鼓舞し続けている。バーナンキ議長の信念が市場と経済を動かしているのである。
対して日銀白川総裁はデフレが害悪だとも思わず、それが回避できるとの信念も持っていない。中央銀行総裁が持っていないデフレ脱却という期待を、どうして市場が抱けようか。つまり、安倍首相が断固としてデフレ脱却を推進するのであれば、中央銀行の総裁には、最低でも金融政策によってデフレを終焉させることができること、そのためにはどのようなこともでき、どのようなことでもすると言う覚悟のある人物が必要だ。今や焦点は安倍首相の覚悟にかかっている。