生活実感から乖離した高株価は正当化できる
ストラテジーブレティン(362 号)
7 月 31 日の日銀利上げによって引き起こされた、3 日間で 7600 円、20%の空前の株価
暴落(日経平均)は、その後 7 日間で 6500 円、20%と急騰し、下落幅の 85%が取り戻さ
れた。この V 字回復は、株価下落がファンダメンタルズに基づいたものではなかった
ことを示唆している。だが人々が悲観に流されたのも無理からぬこと、と言えなくも
ない。これまで日本人の生活実態はほとんど改善されてこなかったからである。図表1
によって実質個人消費支出を振り返ると、過去 10 年間では、2014 年 3 月の消費税増
税(5➡8%)直前の 2014 年 1~3 月の 310 兆円がピークで、その後一度もそれを上回っ
ていない。コロナパンデミック時 2020 年 4~6 期の 272 兆円から回復に転じ、直近の
2024 年 4~6 月は前期比年率 4.0%と上昇したものの、依然として 10 年前のピークに
比べ 4%減の水準にある。この間企業利益は 2.2 倍、株式時価総額は 3.3 倍、一般会計
税収は 1.6倍になったのであるから、いかに個人生活が取り残されてきたかがわかる。
では株価や企業利益が全くの砂上の楼閣なのかと言うと、そうではない。8 月 15 日に
発表された 4~6 月期 GDP 統計によると、日本人が稼ぐ所得総額(名目 GNI)は 647 兆
円、前年同期の 630 兆円比 2.7%増、前々年同期の 593 兆円比 9.1%増と鋭角的拡大か
続いている。実質 GDPがここ 2 年間 550 兆円で全く成長していない中で何故名目 GNI
が急成長できたのか。第一に物価上昇により名目 GDP が拡大した、第二に海外からの
所得収支黒字が大きく増加したからである。企業利益も株価も税収も名目所得に連動
するのであるから、それらが好調なのは道理に合っている。