懲罰的円高から恩典的円安の時代へ
~逆内外価格差拡大、日本経済復活の決定打~
【ストラテジーブレティン(302号)】
要点
I.3月の3週間でドル円レートは10円の急落となった。円安要因が山積しているのは既知の
話、だがこの突然の急落は市場参加者の意表を突いた。市場参加者は循環論にとらわれて、購買力平価からの負の乖離拡大という長期トレンドを見落としていたのかもしれない。
II.底流で構造的円安が進行しているのではないか。懲罰的円高の時代(為替水準が購買力平価を上回り競争力に追加的負荷を与える時代)がはっきり終わり、恩典的円安時代(為替水準が購買力平価を下回り、競争力を押し上げる時代)に入った可能性がある。
III.為替論は長期、国益を基準に語られるべきである。短期・個別主体でみれば「円安は良いor悪い」の得失両論が相半ばし、結論は出ない。しかし長期・国益ベースでは円安に大きな利点がある。積極的金融緩和姿勢を堅持する日銀のスタンスは国益という観点から評価できる。他方、短期・自己利害に基づく財界・政治家・メディア・一部エコノミストの悪い円安批判は潔くない。円安というニューノーマルに対応する英知が望まれる。
(1) 円独歩の急落、市場参加者の意表を突く
円を巡るパーセプションの変化
3月の3週間(3/10 115円/ドル➡3/28 125円/ドル)でドル円レートは10円の急落となった。
①米国の金融引き締めによる金利差拡大、②日本の貿易赤字転落、③膨大な資金流出(米株投資、債券投資、グローバル直接投資M&A)など、円安要因が山積しており、120~130円への円安予想は方向としては当社の想定通り、しかしこれほどの急激な円安は意外であった。
米国長期金利の2.0%(3/10)までの上昇に対してドル円レートは動かなかったが、以降堰を切ったような円安となった。円はすべての通貨に対しての独歩安であること、有事の円買いが起きなかったことなど、円を巡るパーセプションの根本的転換が起きている可能性がある。