日本の物価が悲鳴を上げている
~日本のデフレの根本原因と展望①~
【ストラテジーブレティン(278号)】
経済も投資活動もすべては価格から始まる。価値創造も利益も、安く買って(獲得して)高く売り、価格差を得ることで成り立っている。価格分析は経済分析の根本である。
この最も大事な価格において、日本が悲鳴を上げている。日経新聞記者中藤玲氏著「安いニッポン『価格が示す停滞』」(日本経済新聞出版社2021年3月8日) はその驚くべき悲鳴をつぶさに報告している。今や日本の物価は新興国並みに下落しているという現実である。30年前、世界最高の高物価国であった日本の驚くべき凋落である。なぜこんなことになったのか、どうすべきか、どうなるのか、このことを抜きにして、日本株投資も日本企業の戦略策定も成り立たない。武者リサーチではシリーズで「日本デフレ論」を展開していく。
新興国並みの日本の低物価
世界最安のディズニーランドは東京(8,200円)である。カリフォルニア(14,500円)は言うに及ばず、パリ、上海、香港よりも安い。100円ショップをグローバル展開しているダイソーの税抜き価格を比較すると、日本の均一価格100円は、オーストラリア(220円)、アメリカ(160円)など先進国は言うに及ばず、タイ(210円)、シンガポール(160円)、中国(160円)、ブラジル(150円)、台湾(180円)など新興国よりも格段に低い。エコノミスト誌が世界横断で調べるビックマック単価(2021年1月)を見ると、日本360円(3.75ドル)は、世界最高のスイスのほぼ半分、韓国やタイよりも低く、先進国では最低である。コロナ前日本に殺到していた外国人観光客の理由は日本人が手前みそで解釈していたおもてなしや安全清潔などではなく安さである、と著者中藤氏は記している。