日本株の過熱感が指摘される現状
日本株相場もさすがに過熱感が指摘されている。とくに日経平均は一部の銘柄への偏りが顕著でいびつな構造となっている。10月末はアドバンテスト(6857)1銘柄で日経平均を1000円も押し上げた日があった。10月の日経平均株価は月間で7478円(17%)高となったが、アドバンテスト、ソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)、ファーストリテイリング(9983)の4銘柄だけで、日経平均を12%(5,700円)以上押し上げた計算だ。
日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割ったNT倍率は15.73倍と、2021年3月2日につけた15.68倍を超えて2000年代では最高水準となった。

しかし、日経平均のPER(株価収益率)をTOPIXのPERで割ったPERのNT倍率(グラフ2:青線)を見ると、それほど日経平均だけが買われ過ぎているというわけではない。
これは日経平均構成銘柄のEPS(1株当たり純利益)の上方修正率が高いため、バリュエーションでみれば日経平均の買われ方がそれほど突出しているわけではないということである。

決算発表が佳境を迎えているが、ここまで全体としては好決算が多く、業績見通しも日を追うごとに上昇修正が進んでいる。特に来期のQuickコンセンサス(アナリスト予想の平均)は日経平均のEPSに換算すれば3200円弱のところまで上がっている。

来期ベースの業績見通しで測れば現在の日経平均はPER15倍台の水準だ。
こう考えると現在の日本株は、日経平均の偏りを考慮してもそれほど割高な水準ではない。
米国株が崩れれば、日本株もそれに巻き込まれる
しかし、これだけ「AI相場はバブルか?」という議論が、特に米国で熱を帯びてくると警戒するに越したことはない。米国株が崩れれば、日本株もそれに巻き込まれる。日本株市場の脆弱性を考えれば、そうなった場合はおそらく米国株以上の下落に見舞われるだろう。
「バブルは弾けてみて、初めてバブルだったと分かる」と言われる。相場の天井をピンポイントで当てるのは至難の業というより不可能だと思う。いつ大きな調整が起きても不思議ではないと覚悟しながら、この相場に乗っていくほかはないのだろう。
せめて、通常よりはキャッシュポジションを厚めにする、短期の投資対象は早めに利益確定する、などのスタンスが肝要になってくる局面だと思う。
相場が調整局面を迎える可能性_AIバブル崩壊とは別の視点
一方で、バブル崩壊とは別のプロセスによって相場が調整局面を迎える可能性も高まっている。
◇この先の株価上昇を阻む未だかつて経験したことのない巨大なリスク
(2025年10月24日付け ストラテジーレポート)
で述べたことが早くも現実味を帯びてきた。米国ではIT企業を中心にリストラが加速している。一部民間の雇用データではすでに雇用が減少に転じているところもある。現在は政府機関閉鎖で政府の雇用統計発表が止まっているが、再開されれば来年のどこかでNFP(米非農業部門雇用者数)も減少に転じる時期がくるだろう。そうなったときにFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待と景気後退懸念のどちらがより強いインパクトをマーケットに与えるか - 定かではないが、相場が転換するリスクであると今から認識しておいたほうが良いだろう。