FM 今週のポイント(12月8日)

2014/12/08 <>


*先週末は米国経済の順調な回復ぶりが確認されました。11月の雇用統計によると非農業部門雇用者数増加数が32万1千人となり事前予想の23万人程度を大きく上回りました。イエレン議長が心配している労働の質の問題もU6(正規雇用につけずパートを余儀無くされている人を含む「広義の失業率」)は11.4%となり前年同期から1.7%低下しています。金融政策の変更に大きな影響を与える平均時給の伸びも10月比9セント増の24ドル66セントとなり昨年6月以来の伸びとなっています。この結果を受けて金融市場では早期利上げ観測が再浮上、円安ドル高が急速に進みました(NY市場では121円台半ばをつけた)。NY株式市場もダウ工業株30種指数が史上最高値を更新、18000ドル大台に迫っています。CME日経平均先物も18000円大台を突破して今週の国内株式市場は堅調なスタートを切りそうです。


*先週注目を浴びたイベントがECB理事会でした。マーケットの一部では(筆者も含めて)今回の理事会で来年1月からの本格的QEが決定されると思われていましたが、結果は経済予測を下方修正したものの「来年初めにもQEを決定したい」と言うドラギ総裁の発言だけで、マーケットの期待感を満たすものではありませんでした。ただし、失望感から金融株式市場が混乱しなかったのはQE反対派(ドイツ、オランダ、ルクセンブルク等)の外堀が徐々に埋まりつつあるとの印象を与えているからでしょう。何れにしても来年早い段階でのECBのQE開始は既定路線であり、2月ごろ審理が始まるとされる欧州司法裁判所の判断等(2012年にECBが打ち出した南欧債の購入措置について)で政治的にQEへの道が狭まった場合はリスクが大きくなり要注意です(ドラギ氏は5対4で追加緩和を決めることができた黒田氏が羨ましいでしょうね)。


*今後、世界の株式市場を見通す上でポイントとなるのは原油価格の動向です。WTI先物価格は一時、66ドル台まで低下(年初来40%下落)していますが、OPECが減産しない方針を打ち出したため当面は反発上昇の目処がつき難くなっています。原油価格下落の背景は多々取り沙汰されていますが、一つは新興国経済の減速、省エネ化でしょう(中国においても原油がぶ飲み経済から脱しつつある)。QE3終了に伴う過剰流動性モメンタムの低下によるリスク資産選別の流れ(短期的により好パフォーマンスが期待される投資対象が選別される)も一因でしょう。そして政治的な要因→ロシア、イラン等の米国にとって敵対する産油国を懲らしめる上で原油価格の低下は効果的な戦略です。すでにロシア経済は原油安とルーブル安が連動して大幅な冷え込みを余儀無くされています(来年はマイナス成長が想定され、ロシア証券取引所上場全銘柄の時価総額合計がアップル株の時価総額を下回っている)。スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランの対立も明白でサウジと米国の思惑が一致しています(イランの採算ラインは1バレル130ドルと言われている)。当面は原油価格が低迷すると観た方が無難でしょう。米エネルギー省によるとレギュラーガソリンの全米平均価格は直近で1ガロン2.78ドルと、この1年で約15%低下しています→家計への恩恵は年間で約750億ドル(9兆円)と想定されます(実質GDPを0.2~0.3%押し上げる)→先ずは原油価格低下の恩恵を(弊害を忘れて)相場想定に織り込みましょう。

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