やってはならないこと
・またぞろ金融不祥事が相次いでいる。何が問題なのか。人は放っておくと何をやるか分からない。ルールを決めて教育すれば分かっているはずであるが、どうして犯罪行為に走ってしまうのか。つい誘惑に負けてしまうからである。もうちょっとうまくやりたい、人より多く儲けたい、自分のノルマを達成する必要がある、らくして儲ける方がかっこいい、少しくらいなら見つかるまい、みんながやっていることだから、自分だけ手を染めないのは損をするなど、こうした感覚であろう。
・本音で、自分に問うてみたい。結局、自分はどうしたいのか。所詮、ヒトと比較して、うまく儲けたいだけだろう。これでは、メイクマネーのためには手段を選ばない、という行動に行きついてしまう。では、どうすればよいか。さほど難しくはない。3つの信念を固めておけばよい。いずれも、同じことを別の側面からみている。
・1つ、ダメなものはダメ。超えてはならない一線を自分なりに決めておくことである。具体的なことではない。何らかの事象に直面したら、これって大丈夫なの、と疑問を持つことである。そのうえで、ならぬことはならぬ、ダメなものはダメ、と判断すればよい。それを前提にどう立ち回るかを考えて行くと、進むべき道は自ずと見えてくるはずである。
・2つ、イマフはやらない。インサイダー取引、マニピュレーション、フロントランニングは絶対にやらないことである。インサイダー情報を入手した場合、自分が第1次情報受領者であっても、本人がその情報を使って金融取引をしなければ、人に伝えてもインサイダー取引にはならない、というが本当だろうか。法に抵触しない形で工夫をすればすり抜けられるので、その工夫をするのが腕の見せ所という視点では話にならない。
・さらに、マーケットを操作して、自分だけうまく立ち回ろうというマニピュレーション(操作)も許されない。情報開示や取引執行の上前をはねて、先回りしてひと儲けしようというフロントランニングも姑息な手法である。
・3つ、ウソ取引はやらない。うそは必ずばれる。誰かをだまして自分だけうまく儲けようというウソ取引は必ず見つかってしまうと覚悟すべきである。ウソ取引は1人ではできない。必ず相手がいる。最初はうまくいったとしても、いずれ相手との間に齟齬が生じる。利益の取り分やうまくいかなかった時の対応で、必ず仲たがいが始まる。あとは文句が噂として広まり、通報によって知られてしまう。うまくいったとしても、自慢話や派手な生活を通して分かってしまう。ばれたら、全てはおしまい。全く割に合わない行動である、と理解しておいた方がよい。
・まして、情報を捏造しようという粉飾は許されない。架空取引、循環取引はもちろん、ありそうもない将来収益を尤もらしく作り上げ、それを現在価値に割り引いて企業価値を高く見せようという一見合法的な手法に騙されてはならない。
・さらに気をつけておきたいことがある。自分の才覚でビジネスがうまくいっている時でさえ、ヒトは何か違法なことをやっているのではないかと疑い、その疑念を広め、陥れようとする。悪気はないとしても、明らかに意図はあるので注意したい。ヒトは、不確かな情報を聞いた場合、誰かに話したくなるのである。「ねえ、ねえ、知ってる!」と始めてしまう。要は疑われないようにすることである。
・この3つの原則さえ身につけておけば、細かい法律以前に自分を律することができる。その上でどう戦うか。マーケットで戦い、望むようなパフォーマンスを上げるには、価値創造を見抜く目利き力が問われる。ゼロサムゲームはできれば避けた方がよい。そこにはリスクマネジメント上一定の価値はあるが、本来の価値創造にもっと貢献したいものである。そのために、経営者を見る目、企業を見る目、金融商品のリスクとリターンを見る目を一段と鍛えていきたい。企業のIRの人は、運用機関とマネージャーを見抜く目を同じように養うことが求められる。個人投資家も目先の儲け話には十分注意する必要があろう。