New-IT Transformationの実践~AR、RBの活用、働き方改革

2018/01/04

・ITによる生産性革命は大きなテーマである。人口減少社会の日本にあって、日本企業の生産性革新は急務である。国富を高めるには生産性の向上が必須であり、ヒトや組織の生産性を向上させるには、ITの活用が求められる。しかし、どの産業、企業においても、ITの活用は不十分であり、「攻めのIT」によるビジネスモデル作りは遅れている。

New-ITトランスフォーメーションとして取り組む市場は3つある。1つは、経営レベルのビジネスモデル変革のためのIT、2つ目は、LOB(Line of Business:事業ライン)レベルの業務革新のためのIT、3つ目は、従来型IT部門におけるインフラとしてのITである。

・インフラとしてのITは14兆円市場であるが、これがNew-ITに代替していく。一方で、LOB(Line of Business)はまさに業務の現場であり、生産、販売、マーケティングなど、ここでITが新ビジネス作りに貢献する。ビジネスモデルの革新もITがそれを支えるようになっていく。

・チェンジ(コード:3962)は、New-IT Transformationを実践している。例えば、東京メトロのトンネル検査にiPadを導入した。そのアプリを当社が作成して、トンネル検査の作業効率は大幅に改善された。従来は写真を撮り、データを計測し、それをプリントして、資料を作成していた。真夜中の4時間しか作業時間がない。このやり方では、一晩に2km進むのがやっとであった。これを、紙を使った資料ではなく、iPadを活用して直接本社のシステムへ入力できるようにした。

・社会インフラの老朽化に対して、いかにメンテナンスを効率よく実施していくか。このテーマに、当社がソリューションを提供したのである。いわばオールドITからニューITへの転換である。ホワイトカラーの事務管理のための効率アップからさらに踏み込んで、鉄道やエアライン事業などの現場の生産性アップをターゲットにしている。

・東京メトロ、東急電鉄など、鉄道向け業務オペレーションの変革と市場深耕が広がりをみせている。そのためのiPad導入・アプリ開発が進んでいる。個人はスマホを便利に使っているが、今や企業の方が現場においてはITの活用が遅れているともいえる。ここにノートPCやタブレットを導入し、効率アップを図っていく。

・鉄道システムの点検業務管理において、トンネル検査の社内訓練用にAR(拡張現実)アプリが使われている。鉄道システムでは、トンネルの点検、駅や線路の点検、車両の管理業務について、いかに生産性を上げていくかがポイントである。

・東京メトロは新木場に研修センター作り、そこには駅が完璧に再現されて、いろいろ実験ができる。しかし、そこにあるトンネルは真新しく、実際の古いトンネルとは全く違う。そこでiPadをかざすと、ARを通して古いトンネルの壁面が見え、そこで老朽の度合いを目視して、判断力を養うという研修ができる。

・ARを使って再現し、そこでトンネルの損傷を点検するという訓練を行う。ここで訓練して夜間のトンネル点検のチームに入れば、その効率は大きく改善する。ベテラン社員の知見を若い世代に継承しやすくなるので、極めて有益である。

・アップルのキットを活用しており、この評価は高い。当社は、自社開発の技術とアップルのARkitを併用して、ARの法人ユースを開拓していく。業務訓練に用いるという用途は多面的な展開が期待できよう。

・アップルのARkitの活用では、日本で最も早く、法人向けユースケースを作っていこうとしている。ARをトレーニングに応用するという用途は今後かなり広がっていこう。

ロボティクス(BR)の活用では、ANA(全日空)の手荷持仕分けで新しいコンセプトデザインからスタートして、応用に入っている。羽田空港でのロボット導入実証実験が、経済産業省(METI)のプロジェクトとして採択された。

・顧客が手荷持を預けるところは自動化が進みつつあるが、裏側の仕分けは熟練した人手に頼っている。これが人手不足で対応できなくなりつつある。ここに高性能の仕分けロボットを入れて使いこなそうというものである。

・ANAエアポートサービスでは、手荷物のハンドリングロボットを開発している。重さ、形がバラバラなので、それをどうコンテナに上手く積み込むか。AIを使ってそのアルゴリズムの開発を行っている。

・伊藤忠商事には働き方改革に役立つモバイルセキュリティソリューションを提供し、それを他にも展開している。ワークスタイルの変革に取り組む伊藤忠商事に、セキュリティに優れたシステムとモバイル業務系アプリの導入が本格化した。

・海外のシステム商品を日本に持ち込んで、それを活用するビジネスモデルを作っていく。国内初で、ブラックベリー(Black Berry)のプラチナ・パートナーに認定された。ブラックベリーは、一時期流行った通信端末からは撤退し、ビジネスモデルを転換した。ソフト開発会社として、セキュリティに強みを発揮し、その暗号に関する技術レベルはかなり高い。

・ブラックベリーは、米国国防総省(ペンタゴン)向けに、各種のセキュリティ製品を提供しており、このセキュリティ技術を活用して、あらゆるメッセージ・ファイルを安全につなぐことができる。

・当社はこのソフトに興味があり、日本ではまだほとんど活用されていないので、そこをカバーし、マーケティングしている。日本において働き方改革における生産性向上のための安全なネット環境を提供することに活用している。

・働き方改革では在宅勤務がポイントで、社外でも会社にいる時と同じようなネット環境を安全性高く保証する必要がある。ペンタゴンのセキュリティレベルを提供するという点で、ブラックベリーの製品は有効であり、当社はその応用で先頭を走っている。

・伊藤忠商事は、働き方改革の中で、仕事のモビリティを高めようとしている。どこででも働けるようにする。その時、社内のいる時と同じようなIT環境をいかに作っていくかがポイントである。

・多くの企業では、セキュリティの制約が強くかかるので、社外では、社内にいる時と同じようにITは使えない。それを、当社は、米国で最もセキュリティが高いシステムをいち早く取り込み、これを応用して、手元の端末でもデータの使い易さを確保するようにした。

・この仕組みをまずトップマネジメントに使ってもらい、その効果を体験してもらった上で、会社全体に広げる方向となった。決め手は、トップダウンである。POC(Proof of Concept、概念実証)を行った上で、一気に適用することとなった。

・このシステムを他社が使いたいといっても、1)適用経験で蓄積が違う、2)当社を通して使うとコストが高くなる、という点で当社の優位性が活きる。この仕組みを他の商社などにも展開している。こうしたNew-IT Transformationの実践に大いに注目したい。

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