会社のポジショニングを明確化
スポーツクラブに行った時、ジムで運動し、プールで泳ぐことの両方をやる人はどの程度いるだろうか。どうも全体の2割程度らしい。愛知県の三河安城に本社をおく東祥(コード8920)は、会員数2000名で高収益が見込めるスポーツクラブに加え、プールがなくても同じ高収益が達成できる新しいビジネスモデルを今回開発した。これによって、都心周辺への参入も可能となる。
東祥は、「ホリデイスポーツクラブ」を全国に展開する。大手のスポーツクラブが課題を抱える中で、独自のビジネスモデルを確立し、2011年3月期で売上高経常利益率18.5%、ROE(自己資本利益率)15.4%にみられるような高い収益力を誇っている。経営の根幹は、顧客のニーズに合致したサービスを低コストで提供するという仕組みを構築したことにある。建設業から出発した経験を活かし、スポーツクラブという施設サービス業に展開し、他社がまねできない経営効率を実現している。
ある企業がどれだけ優れているか、ということをどのように見分けるか。そのためには、市場とイノベーションを軸に、ビジネスモデルの強さや、それをマネージしている経営者の思いとリーダーシップを知ることが、最も重要である。ここでいうイノベーションは、狭い意味での技術革新ではない。新しいサービスを生み出すことも、それを生み出す仕組みもイノベーションである。それを、企業の価値創造に結びつけ、ひいては持続的な儲け(付加価値)を創出していくのである。
人にまねのできない仕組みを作り出すことが、最大の仕組み革新である。一時代前の例で言えば、トヨタのかんばん方式について、理屈は誰でもわかるが、やってみろといわれるとそう簡単にはまねできないのである。ユニクロ(ファーストリテイリング)や餃子の王将など、なぜそこだけが繁盛するかの理由が分かっても、他社にはなかなかまねができないのである。表面的にまねしたとしても、付加価値が残らないから、結局は長続きしない。
何よりも大事なことは、それに取り組む経営者の思いである。思いだけで経営革新は実現できないが、共感を呼ぶ思いなくして、何事もスタートしない。経営者の思いを知り、それをビジネスモデル(企業価値を生み出す仕組み)にどのように実現しようとしているかを見ていくことで、企業を見抜く目は次第に鍛えられていくことになろう。まずは、会社のポジショニング(位置付け)をはっきりさせたい。