スマホ、タブレットで仕事が便利になる
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの専門家が業務用にスマホ(スマートフォン)やタブレット(PDA)をどのように活用するかについて講演した(IT Pro Exp 2011 フォーラム)。スマホ、タブレットの導入で事業活動はどう変わるか。いろいろな事例が紹介されていた。
ゴルフ場のカート管理が効率化した。スマホがGPS(位置情報)とトランシーバー機能を持つので、リアルタイムで状況がコントロールできる。ブライダルギフトの営業において、タブレットを使うことによって、カタログがいらず、その場で営業報告書も作成できてしまう。運輸においては、トラックの運行状況がライブカメラ付きで把握できる。賃貸マンションの管理に当っては、どこに手直しが必要かという点をすぐにデータ化でき、報告のための紙がいらない。かつては、デジカメ、ケータイ、PC(パソコン)で作業していたものがタブレットで済む。確かに、業務効率はアップしているようだ。
全日空(ANA)のキャビンアテンダント6000名は全員タブレット(iPad)を持っている。マニュアルなど紙の書類を持ち歩かなくて済む。中古車のガリバーインターナショナルでは、業務にiPadを導入して、脱PCを推進中である。佐賀県庁の救急車はiPadを利用して搬入先を探す。救急医療のスピードが上がり、コストも削減されている。東急ハンズ(都市型ホームセンター)では、iPhoneでクレジットの決済ができる。徳島県上勝町にある(株)いろどりは、葉っぱビジネスで有名である。料理を飾るさまざまな葉を出荷している。今まではPCを使っていたが、タブレット化することで作業の現場(山や畑)でも注文のやりとりができるようになった。老人たちでも手軽に対応できる。
新しいタブレット(LTE)を使うと、どこからでも会議に参加して、声だけでなく、顔や資料を自由に見ながら意見を言える。テレビ会議がどこにいてもできるようになる。確かに便利そうだが、コストとセキュリティはどうか。コストは安くなりそうだが、本当に効果が上がるかどうかは使い方次第である。大事な情報がもれてしまうようなことがないようにセキュリティは確実に守られる必要がある。
クラウド化すれば、手元に情報のストレージ(貯蔵)はいらないし、会社のサーバーもかなり不用になる。社内の固定電話は無くなり始めており、オフィススペースもこれまでのように固定化する必要がなくなる。タブレットでは、テキスト、マニュアルなどがペーパーレス化できる。動画も入る。教育においては予習や復習ができる効果が大きい。営業の現場では、写真や動画を効果的に使うことによって、インパクトのあるセールスができるようになる。在庫状況など基幹システムにあるデータにもすぐにアクセスできるようになっている。スマホ、タブレットの普及で、ケータイ、PCの置き換えはかなり進むことになろう。業務用の専用機の置き換えも起ころう。
課題はトラフィック(通信における情報量)が大幅に増えていくことである。トラフィックが伸びることで、通信ビジネスは拡大する。ただ、交通における渋滞と同じような状況が発生すると、通信の反応が遅くなって使い勝手が悪くなる。セキュリティ対策も重要である。落とす、失くすといった事態も発生する。コンピューターウイルスなど不良ソフトウェア(マルウェア)が侵入してくることも防がなければならない。モバイル・デバイス・マネジメント(MDM)を一層充実する必要があろう。
かつて仕事の現場でPCが1人1台になっていったが、今やスマホが同じようになる。業務用でPCやケータイが当たり前になり、仕事のやり方は大きく変わってきた。ここで考えるべきことが3つほどある。1つは、PCやケータイで仕事のやり方は変わり、便利になってきたが、それで働く社員の生産性(効率)は上がったかという点である。2つ目は、それによって会社全体の生産性(付加価値)はどの程度向上したか。そして3つ目は、PCやケータイの普及によって必要がなくなった仕事や会社はあるか、新しく登場してきた仕事や会社はどんな内容か、という点である。同じことが、スマホやタブレットの爆発的普及によって、これから起きてこよう。
業務用の分野においても、スマホ、タブレット関連のビジネスは急速に拡大していくので、これらに取り組む企業が数多く出てこよう。新しいベンチャー企業も登場してこよう。業務用、個人用を問わず、スマホ関連ビジネスは次の一大市場となっていくので大いに注目したい。