出雲大社 ~ 大国主と大黒天の融合に捉われず実態を見る

2013/09/24

・平成の大遷宮が行われた出雲大社に参拝した。60年ぶりの遷宮というのがきっかけであったが、60年に1回という意味ではないという話を現地で聞いて驚いた。縁結びの神様として有名であるが、この縁にも様々な意味がある。若い女性が多いので、良縁を求めてという観光客もいるのだろうが、どんな人にとっても心を清めるものとなろう。

・遷宮とは、社殿の新築、改築、修造に合わせて御神体を移すことである。伊勢神宮は、式年(定められた年)の遷宮で20年に一度行われる。しかし、出雲大社は60年の式年ではない。だいたい60年に一度の割合を目途に大改修を行う必要があるので、それに合わせて、御神体に仮の御新座に移ってもらい、完成後、もとの本殿の戻っていただく。今回は5年前に仮遷宮を行い、今年、主祭神の大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)がお遷りになった。

・現在の本殿は1744年に造営されて以後、1809年(65年後)、1881年(72年後)、1953年(72年後)に3度の修造が行われた。今回は、2013年(60年後)の大屋根の葺き替えであった。

・紹介があって出雲大社の権禰宜(ごんねぎ)に案内してもらい、正式参拝した。白い装束を上に羽織り、手を清めた後、本殿の前に進み参拝した。一般の人は、この外側のところまでしか入れないが、特別中に入ってお参りをした。その後、お神酒を頂いた後、本殿の周りを一周しながら解説を聞いた。

・大社(おおやしろ)はかつて、山の上にあったようだが、その後下に降りてきて、高さは現在の2倍の48mほどあったらしい。昔の基礎工事であるから、杉の木を3本組み合わせて1本の柱として、それを何本も建てて、本殿の構造を支えていく。しかし、地下が6mくらいしか掘り込んでいないので、風雪の中で耐えきれず、本殿が倒れてしまうことがあった。

・そこで、江戸時代の建て替えの時には現在の大きさ(高さ24m)に落ち着いた。本当に48mもあったのかということが長らく議論になっていたが、それを裏付ける3本の杉をまとめて1本の柱にした跡地が2000年に遺跡として見つかり、3本の杉柱も掘り出された。その柱の根っこの部分は、大社の隣にある古代出雲歴史博物館に展示してある。

・60年に一度の大改修なので、技術の伝承はかなり難しい。今回は昭和28年以来であるが、戦後間もなくの当時でも、それだけの技術を込めていたかと関係者は驚きながら、古いものを剥がして、新しいものに替えていった。今回はすべて記録をとって、ビデオの撮影も行った。次の修造に活かすことができるようにと配慮した。

・屋根は檜皮(ひわだ)で作られている。檜(ひのき)の木の皮である。それを64万枚も使っており、長いものは1枚120㎝もある。それを竹の釘でとめていき、軒先の厚さは1mにもなる。雨水を防ぐことも大事だが、速やかに下に通して、水を逃がしてやる工夫もされている。中に雨水が貯まってしまうと腐り易くなり、屋根が長持ちしなくなる。

・屋根の上の方にある鬼板や千木(ちぎ)、勝男木(かつおぎ)といった装飾については伝統的な「ちゃん塗り」が施される。これは松ヤニ、えごま油、鉛、石灰を混ぜたものである。銅板を使ったところには、いずれ酸化して緑青(ろくしょう)がふいてくる。こうなると内部の腐食を防ぐので長持ちするようになる。到る処に消火栓が配置されて、国宝を守るようにしてある。屋根の上には避雷針がついているが、ここに雷が落ちたことは一度もないという。

・御本殿の中は天井が1つで、そこには雲の絵が描いてある。もともと出雲大社は山の上にあったが、その山は本殿の後ろにあり、八雲山という。天井には雲の絵が7つ描かれているという。どうして8つではないのか。近くの神社の天井に9つの雲が描いてあるところがあり、そこに飛んで行った雲が帰ってこないという説もある。が、本当は完成していないという意味らしい。日本らしさとして、未完にしておくという考えがある。全て完成させるのではなく、次へのつながり、余韻を残しておくという意味である。

・最近、パワースポットという言葉が流行っているが、そもそも神社はパワースポットである。全国には八百万(やおよろず)の神様がおられるが、みな何らかの力をもっている。縁結びというのは、いろいろ縁をとりもつという点で一種のパワーであるともいえる。

・出雲縁結び空港から、出雲大社まで車で30~40分くらい。島根県(6708㎢)は人口70万人、因みに松江21万人、出雲17万人である。出雲地方と石見地方に二分され、歴史的にも分れていた。出雲弁と石見弁はそれなりに違うようだ。出雲弁の代表は「だんだん」(ありがとう)で、テレビ小説のテーマにもなった。

・石見の神楽(かぐら)の展示を古代出雲歴史博物館でやっていた。出雲縁結び空港では、出雲神楽の生演奏を鑑賞した。石見神楽の代表演目は大蛇(おろち)で、スサノオノミコト(須佐之男命、天照大御神の弟)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するという話である。出雲神楽では丁度、日本武(ヤマトタケル)を演じていた。日本武が東夷(あずまえびす、野蛮人)を成敗する話である。結構激しい踊りで、衣装も派手な作りで面白い。

・天照大神の弟がスサノオノミコト(須佐之男命)で、その子どもが大国主命(オオクニヌシノミコト)である。若い時に因幡(いなば)の白うさぎを助け、葦原中国(あしはらのなかくに)を治めた。しかし、ここを譲るように天照大神に命じられ、結果的にその見返りとして壮大な御殿の造営を願い、以来、目に見えない縁結びを司る神様となった。ここには何かもっと深い意味があるように思う。

・大国主命は、古事記、日本書紀に登場する。大国はダイコクとも読めることもあり、大黒天と習合(折衷、同一視、融合)されるようになった。江戸時代には両者が一緒になって、民間信仰の中で、ダイコク様として親しまれるようになった。大国主は天皇家につらなる国づくりの神様、大黒天はヒンドゥー教に由来するインド密教として伝来し、仏教の流れとして広まった。七福神の神である大黒天は、大黒柱といわれるように食物、財産などを司る神となった。

・私たちはさまざまな祈願を行う。それは自らの気持ちを改めて確認し、今後への決意を込めながら、縁を求め、運を手繰り寄せようとしている。自分だけではどうしようもない事柄に対して、願いの実現を求めている。思いを新たにし、何らかの行動を起こすという意味において、神道は1つの文化であり、その代表格が出雲大社である。投資の世界においても、これから縁が広がり、深まるようにと祈ってきた。

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