企業価値をいかに企画するか

2024/10/01 <>

・どんなビジネスでも、まず元手を確保する必要がある。次に原価計算をイメージして、いかに黒字を出すか。ここが想定できなければ事業として成り立たない。当然、大いに勝算あり、として事業を構想し、推進していく。

・大企業においても、ベンチャー企業においても、新規事業というのはチャンスがありそうで、なかなかうまくいかない。常識の範囲で事業を計画しても、それが目を見張る価値を提供できるようにはならない。

・何らかの非常識な強みが必要である。一見できそうで、他社にはできないことを強みとして、磨いていく必要がある。走りながら考えるにしても。偶然に頼るだけでは危うい。努力は必要であるが、頑張れば何とかなるというほど世の中は甘くない。

・新しい製品やサービスをアイデアとしてイメージした時、その原価計算を想定できるか。こうありたい、こうできたらいいなという期待はあるとして、それを実現するには相当なツメを必要とする。原価は計算するより、まず企画せよ。原価企画が何よりも重要である。

・原価企画ができるか。企画できるとして、それがビジネスとして成り立つような仕組みに作り上げられるか。この構想力が問われる。

・資金がなければ、事業は継続できない。資金的余裕がなくなると、経営判断に狂いが出てくる。本来のあるべき姿や行動から離れて、当面の資金繰りに四苦八苦するようになる。

・こうなると、事業にも手抜きが出て、ビジネスモデルが崩れてくる。上場企業においても、粉飾決算まがいの会計操作に追い込まれる例も多々ある。

・新規事業を自力で立ち上げるのか。強みを出し合って、合弁事業とするのか。他社の事業を買収して、一気に立ち上げるのか。スピードとリスクの取り方で、方策はいくつもありうる。

・常に自社とのシナジーを考慮していく。うっかりすると、自社にとって都合のよいシナジーばかりに目がいってしまう。そうすると、判断が狂い、目算が外れてくることもある。

・M&Aでは、のれんの取り扱いが課題となる。今のバランスシートには計上されていないが、当社にとって価値のある資産を評価して、それを無形資産として購入する。この分がのれんである。

・IFRS(国際会計基準)では、のれんの償却は必要でないが、その資産が価値を生まないとなったら、一気に減損償却が必要になる。日本の会計基準では毎年一定額を償却していくが、見込みが外れればやはり減損を余儀なくされる。

・企業の稼ぎをどうみるか。どの企業にも、その会社の本業がある。まずは本業の儲けを知りたい。そのためには営業利益が最も大切である、というのが一般的な見方である。

・でも、お金に色はない。大事なのはキャッシュフローで、どのくらいお金が入って、残っていくか、という見方も有力である。とすれば、純利益よりもEBITDA(償却前営業利益)を重視すべきである。となる。

・M&Aの時、その企業のEBITDAの何倍まで企業価値として評価するか。このEBITDA倍率が重要な指標となる。PER(株価収益率)を企業の成長性評価として利用するのと類似する。EPSも重要な指標であるが、企業の実質価値はEBITDAの方が妥当であるとして、これをKPIとして使っている企業も多い。NTTもその1社である。

・資本コスト経営が広く求められ、多くの企業で定着し始めている。ROICとWACCが資本効率を測る上で使われている。でも、本当に使いこなしている企業と形式的に表示しているようにみえる企業では、大きな差があろう。

・「資本コストと株価と意識した経営」が本気で求められて、ようやく変化が出ている。日本発のグローバル企業で、競争優位性を発揮している企業において、資本コストをベースにした経営はずいぶん前から実行されている。でも、その数は多くなかった。

・製品やサービスが国際競争力を有していれば、それを武器に収益性も確保できた。ところが、競争優位性に陰りがでてくると、それをどう立て直していくか。その時に、収益性や効率性をきちんと測って、ポートフォリオの入れ替えや事業の立て直しを実行するには、共通の尺度が必要である。

・これが機能していないと、ビジネスモデルの再構築がうまく進まず遅れてしまう。日本企業はこの20年遅れをとってしまったが、ようやく一部に変化が出ている。

・ビジネスモデル(BM)については、多層的にみていく必要がある。大企業であれば、事業部門がいくつもある。事業特性からみてBMもいろいろありうる。一方で、企業全体を俯瞰的に見た時、全社的なBMを総体としてみることも必要である。

・全社のBMtは、個々の事業(BM1,BM2,BM3など)の総和であるが、その総和のあり方も問われる。積層的にとらえることで、BMの社会的価値と経済的価値をうまくつなげることもできよう。

・資本効率重視の経営を実践しながら、BMを積層的にとらえて、先進的な企業経営を実践している企業として、例えば村田製作所がある。

・通常、企業の将来を予想するのが、アナリストの仕事である。しかし、予想がはずれることも多い。本当に予想できるのか、という疑問も出てこよう。企業経営者は、企業の将来を自ら創り出そうとする。そのためには、企業価値の予想ではなく、価値の企画が必要である。

・この企業価値を何年のタイムスパンで立案し、実行していくか。短かくて5年、長ければ20年という期間が想定されよう。投資家はビジョンと中長期計画を通して、この価値企画を知りたい。その内容について議論をして、ビジネスモデルを共有したい。そういう会社を10社ほど選んで投資したいと思う。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。