多様性を組織能力の向上にどう活かすか~企業の本質を見る
・DeNAの南場会長は、人材の質に妥協しない。個性は、とんがった強みをチームにもたらす。会社のカルチャーは、「コトに向かう」ように創っている。社内よりは、市場、事業、顧客に向かうコトで、これらを総称してコトを言っている。
・入社した人材は、3つのルートを目指す。第1は事業をマネジメントするリーダー、第2はエンジニア、クリエイターなどスペシャリスト、第3はスピンアウトしていく独立起業家、である。
・DeNAの退職率は低いが、人材を社内に閉じこめることはしない。単に引き留めることはやめて、2年前から解放することにした。
・具体的には、独立を応援していく。出資はするが、資本の25%以上はとらない。起業して独立する人が75%以上の資本を持てるようにする。これによって、ベンチャー企業を支援する。ファンドとして100億円を用意した。
・「会社の表面積を最大にする」には、人が人とより接触する方が望ましい、と南場会長は語る。社内から独立する人の方が、ビジネス上組みやすい。コトに向かう人材が、事業を通して人々にDelight(喜び)を届けよう、という考えを実践している。
・1)人材は囲い込まない、2)人材の流動化をもっと促進すべきである、3)個人や社内の人材が“夢中”を手放さないことである、と強調する。スタートアップがどんどん生まれるエコシステム(土壌)を作っていく方針である。
・100億円の「Delightファンド」は、①成功のリターン、②提携の機会、③M&Aの機会、④人材の還流、を求めていく。エコシステムに失敗はない。ビジネスモデルの仮説を検証したのであるから、出戻りはOKである。
・人材育成にあたっては、仕事が人を育てるという考えで、仕事の難易度は50:50でアサインする。つまり、できそうなこと50%、挑戦的なこと50%という内容である。失敗しそうになると、助けてカバーする。失敗のリスクと責任は会社がとる。
・失敗を恐れるより、人が育たない方が問題である、と認識している。コトに向かうに当たっては、言語化を徹底する。明確に表現できないようでは、ビジネス化できない。
・仕事は必ずスモールチームで行う。仕事をしない人が隠れないように、必ず3~10人のチームで行う。ベンチャースピリットが活きるようにする。
・DeNAは普通の大企業にはなりたくないという。ところが、最近は大型の仕事が入ってきている。これまでのカルチャーでは、大型の仕事は必ずしも得意でない。
・大型のビジネスでは、間違いが起こらないように、新たな仕組みを必要とする。その中で、ベンチャースピリットも共有していく。ここが新たなテーマであると語った。
・ピューロランドを再生させたサンリオエンターテインメントの小巻社長は、多様性をどのようにとらえているのか。何よりも顧客が多様化している。ダイバーシティは「個の尊重」にあり、個について常にアップデートしていく必要がある。新しい学びを通して、刺激しあっていくことが大切であると語る。
・多様性を業務にどう落とし込むか。多様性を実践していくには、「否定しない文化」を醸成していくである。相手に対して、シャッターを降ろすのではなく、違いを乗り越えていく。違いは宝である、と認識する。
・「なるほど!」、「Yes, and」と言葉をオンしていく。サンリオの企業理念は、「みんな仲良く!」である。企業理念は扇の要で、遠心力を働かせるには、要が大事である。同時に、扇の要が求心力も働かせる。
・リーダーは理念を浸透させていく。「みんな仲良く!」という抽象的な理念を、場面ごとに現場に伝えていく。テーマパークで対話フェスを行ってきた。これは、計画された偶発性を狙っているという。
・まず聞くことである。社長としてすでに7年たったが、何も知らないという立場で、話す人の裏にある気持ちを聴く。その上で自分のこころの声を聞く。これを通して組織力を上げていくと語った。
・人材をどう活かすか。組織力をどう高めるか。その企業のカルチャーを知る必要がある。新しいカルチャーを創り上げようとしているなら、その挑戦をみていく。トップのリーダーシップが組織能力の向上に結びついているか。ここが企業を見る目の本質的な要であろう。