アナリストの企業評価~4つの軸のインテグレーション

2019/03/04

・企業をどのように分析するのか。さまざまなやり方があってよいが、筆者は、誰もが簡単に共通の軸で分析できる方法を実践している。

・企業の価値創造の仕組みがビジネスモデル(BM)である。BMが1つの場合もあれば、いくつもの事業を手掛けていれば、BMの数も数多く存在する。複数のBMを有する場合でも、ポートフォリオ全体としてその企業はどのような価値創造を行っているのかという姿を明らかにする必要がある。

・まず、現在のBMを4つの軸で評価する。第1は経営力(マネジメント)である。経営者のビジョン、経営方針、これまでの実績、中期計画の立案の仕方、PDCAのまわし方などである。第2は成長力(イノベーション)である。事業の成長力を高めるために、どんなイノベーションに取り組んでいるか。

・第3は企業の持続性(サステナビリティ)を確保するために、どのようなESGの体制と活動を行っているかをみる。SDGsとの結びつきについても検討する。そして、第4に、業績のリスクマネジメントである。想定外に業績がドスンと落ち込まないように、どのような仕組みを動かしているか。業績変動要因の分析を確実に進める。

・これは現在のBM(BM1)に対する分析である。次に、会社が将来作り上げたいBM(BM2)を明らかにする。BM1がピカピカに輝いている会社もあろうが、多くの会社は課題を抱えており、色あせている場合もある。そこで、BM2を描いていく。すでに明らかになっている場合もあれば、十分描き切れていない場合もある。

・では、BM2 をどう実現していくのか。そのやり方(方策)が戦略である。戦略が価値創造の仕組み作りにとって本当に重要か、新しいBM2の形成にきちんと結びついていくか。こうしたマテリアリティとコネクティビティを定性的に読んでいく。KPIが設定されていれば、それにこしたことはないが、よくあるケースでは単なる目標の細分化になっているので注意を要する。

・これらを踏まえて業績予想を行うが、何年分を予想するのか。短ければ1~2年、長くて3~5年であろう。7~10年というと数値に本当に意味があるのかが問われる。業種によっても中期の長さが異なるので、その特性に合わせていく。

・ここで議論がある。企業価値は将来キャッシュフローの現在価値であるから、DCFをベースに算定しようというやり方がオーソドックスである。現在のファイナンス理論の基本であり、ゲームのルールとなっている。将来は不確定であるが、現時点で数値に織り込めるものはできるだけ入れていく。織り込めないものは、それができるようになったら数値化していくというやり方である。

・しかし、企業経営をみると、まだ数値に織り込めないものも必死で作ろうとしている。それこそが中長期の価値創造の仕組み作りであり、BM2を構成するキャピタル(無形資産)への投資である。その蓋然性を読んでいくのがアナリストの本領である。

・曖昧な評価はできない、難しいというのは簡単である。安易にできるというのも甘い分析となってしまう。BM2とそれを実現するための戦略について、きちんと定性評価していくことが深い分析レポートにとって最も重要なことである。

・その場合、株価評価と企業評価を分けたほうが分析に厚みが出るというのが筆者の主張である。機関投資家は、定量的な株価評価はアナリストに頼らなくても自分で出来るし、自分なりの手法を確実に持っている。いい会社かどうかという企業評価は、見る視点によって意見の分かれるところであり、大いに議論が盛り上がるところである。

・中小型企業200社を調査し、その後の個別企業の分析を踏まえると、企業評価(よい会社、普通の会社、今一歩の会社)と、株価評価(割安、妥当、割高)には次のような傾向がみられた。

・よい会社は全体の10%、普通の会社は75%、今一歩の会社は15%、という構成である。一方、割安は全体の10%、妥当は80%、割高は10%という構成であった。これをクロスしてみると新しい景色がみえてくる。企業の質は刻一刻と変化しており、株価もファンダメンタルを反映しつつ、それ以外の要因によっても変動している。

・中長期の企業価値創造を評価するには、定性評価の仕組みを精緻化することである。機関投資家はすでにいろいろ試みて自社の評価システムを作りつつある。定量評価の方式はすでにはっきりしている。企業サイドにおいても、この両面で大いに議論するエンゲージメントの用意が求められる。

セルサイドアナリストは、これからも価値ある存在として役割を果たすことができるのか。投資の世界においても、AI(人工知能)の活用が活発化する。ファンドマネジャーをサポートするAIはイメージしやすい。いずれファンドマネジャーに代替する本格的AIも登場してこよう。

・AIが得意とする分析手法で、投資リターン(α)を生み出すことができるのであれば、そこはヒトに頼る必要がなくなろう。でも、そのAIファンドマネジャーのフレームワークを作るのはヒトであり、自動学習では織り込めない新しい分析手法はやはりヒトに頼ることになろう。

・中長期の価値創造の仕組みを評価する力が、人よりAIの方が優れてくるとするならば、ここでもヒトのファンドマネジャーはいらなくなるかもしれないが、そんなことはない。頻度では計れない事象は数多い。

・価値創造の仕組み作りにおけるマテリアリティとコネクティビティは多様であって、丹念に対話していく必要がある。経営者の意思決定のプロセスを迫っていくことが大事である。

・アナリストはアクティブ運用におけるパフォーマンス(α)に貢献すべく、運用に役立つ価値ある情報を提供するのが、本来の役割である。

・アナリストもAIは大いに活用すればよい。短期情報の収集整理、公開情報やSNS情報からみえてくる価値評価の源泉や材料にはいち早くアクセスして、使えるものは利用できるようにすることである。

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