トルコ、緊急利上げ~リラ相場への影響は?

2018/05/24
  1. トルコ中央銀行は23日緊急会合を開き、LLW金利を3%引き上げ、16.5%としました。
  2. 通貨リラの急落に対する通貨防衛を通じて、インフレ率上昇とインフレ圧力増大の抑制を図ります。
  3. 大統領からの金融緩和圧力は強く、政策効果は不透明です。リラは神経質な展開が予想されます

通貨急落、インフレ率上昇に危機感

トルコ中央銀行(以下、中銀)は23日、緊急の金融政策委員会を開き、政策金利の上限であるLLW金利を3%引き上げ、16.5%としました。中銀は声明文で、「インフレ見通しに改善が見られるまで、あらゆる手段を用いる」と、追加利上げも辞さない構えです。エルドアン大統領の金融政策への事実上の介入を受け、リラの下落が止まらず、通貨防衛を通じてインフレ抑制を図ります。

4月CPIは前年同月比+10.85%と、中銀の意とは逆に上昇し、インフレ目標上限(+7%)を大幅に上回っています。中銀のサーベイでも年内の+10%割れは難しいとの見方が大勢です。今回の大幅利上げによって中長期的なインフレ抑制は期待できるものの、政府の姿勢との食い違いは埋まらず、実際の政策効果は不透明です。

※Late Liquidity Window Interest Rate(後期流動性窓口金利):金融機関向け緊急貸出への適用金利

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引き続き、市場は金利よりもカントリーリスクに注目

リラ相場は、エルドアン大統領が5月14日、総選挙(6月24日)後、中銀への金融緩和圧力を強めると発言したことが嫌気され、下げ足を早めました。対ドルでは、5月半ばには4.5リラ台でしたが、利上げ直前には5リラに迫りました。直近(13時時点)は4.5リラ台に戻していますが、上値は重い状況です。

エルドアン政権は、総選挙での優位を維持するため、積極財政政策を採っています。これが、インフレ圧力増大とリラ下落の悪循環を引き起こしていると見られます。需要が刺激され、経常収支も赤字が拡大しており、これもリラにとって逆風です。高金利はリラへの投資妙味を高めるものの、市場は、政府と中銀との政策の方向性不一致に加え、中東情勢の緊迫化など地政学的リスクも懸念されるなど、カントリーリスクの増大に注目していると見られ、引き続き神経質な相場展開が続くと考えます。

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