変わったのは中国自身ではなく、外部からの視点

2015/09/11

今週の国内株市場も値動きの大きい展開が続いています。とりわけ、9月9日(水)の日経平均は急反発。終値は18,770円で高値引けだったほか、前日比で1,343円もの大幅上昇となり、記録を紐解くと、この上げ幅は歴代で6番目、21年7カ月ぶりです。

ただし、これをもって最近の相場急落が底を打ち、本格的な戻りを試すムードにはなっていない印象です。9月9日の上昇の牽引役は、「相場の下落を見込んでいた売り方の買戻し」という見方が強いようです。実際に、東京証券取引所が日々公表している「空売り比率」を見てみますと、この日は37.4%でした。前日(9月8日)は41.2%でしたから大きく減少したことが分かります。また、今週末にメジャーSQが控えていることも、値動きを加速させた面がありそうです。

減少したとはいえ、37.4%という空売り比率は過去の推移からすると依然として高水準ですので、米国金融政策と中国情勢への警戒を背景に、まだ不安定な相場地合いが続いていると思われます。ちなみに、高水準の空売りについては、足元の中国市場では行いにくい売りヘッジを、代替手段として日本市場で行っているのではという見方もあります。

その中国でも、日本株が大きく上昇した9月9日の上海総合指数の終値が3,243ポイントと、2%以上の上昇を見せ、約3週間ぶりの水準まで戻しています。そのきっかけとなったのは、中国当局が、7%という経済成長目標を達成するために財政出動を行うと発表したことです。

ただし、財政出動については、2008年のリーマン・ショック後に実施したいわゆる4兆元の景気対策(主に財政出動)によって、地方政府の債務問題をはじめ、過剰な生産能力や格差問題など、現在も尾を引いている副作用を生み出した経緯があります。そのため、この発表と同時に、地方政府の債務問題をきちんと管理していく方針や税制改革を進める方針も示しています。なるべく市場に余計な心配をさせないように配慮している当局の意図が感じられます。

そもそも、中国情勢に対する警戒について整理してみると、景気減速傾向は今に始まったわけではなく、実は中国自身はあまり変わっていない事に気付きます。むしろ変わったのは中国を見る外部の視点です。これまで、中国の見通しに対するイメージは、「何だかんだで経済成長を続けていくだろう(ポテンシャルが高い・需要増の期待)」、「その経済成長に伴って人民元も上昇していくだろう(海外からの資金流入期待)」、「政権基盤が磐石なため、適切な手を打てるだろう(いざとなったら政策期待)」というものでした。

景気減速については、これまでの投資主体・高成長から、消費主体・安定成長へと移行する「新常態(ニューノーマル)」の過程にあるわけだから、一時的な減速は仕方ないと思われてきた面があります。ところが、上昇していくと思われていた人民元がいきなり切り下げられ、その後の株価急落に対する当局の対応が後手に回ったことで、急に不安が高まり、仕方ないと思われていた景気減速も「実は結構ヤバイんじゃないか?」というムードに変わったと考えられます。つまり、足元の中国要因による相場の混乱は、中国に対して楽観的に過大評価していた部分を修正している段階と言えそうです。

 

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