厄介かもしれないFOMCの結果

2013/09/19

今週最大の注目イベントだったFOMCですが、多くの予想に反して、テーパリング(量的金融緩和縮小)の開始が見送られました。金融緩和による相場から米国経済の回復による相場への移行という、ひとつの節目になる見込みだったのが、蓋を開けてみれば「あれ?」という印象の強い結果でした。これを受けた18日の米国市場は、NYダウとS&P500が史上最高値を更新したほか、米10年債利回りが一気に2.6%台まで低下するなど、金融緩和の継続を好感する反応を見せました。

今回の縮小見送りの背景としては、バーナンキFRB議長が記者会見で述べた通り、「縮小を正当化できるだけの経済指標が揃っていない」点や、「ここ数カ月の金融状況の急速な引き締まりが景気を減速させるおそれがある」点などが挙げられていますが、一方で、縮小自体の年内開始予定やフォワードガイダンス自体に変更はありませんでした。

FOMC前の米株市場が堅調だったことと、米金利の上昇が落ち着いていたことなどを踏まえると、市場は縮小開始を大方織り込んでいたと思われ、環境整備は着々と進んでいたと言えますが、そこを今回敢えて見送った理由としては少し弱い気がします。これから正念場を迎えるデッドシーリング(債務上限の引き上げ協議)などの米財政問題への警戒や次期FRB議長人事などを見極めようとする姿勢が強調されているのかもしれません。まずはこれらの動向を見極めるため、早期の縮小開始による景気腰折れに配慮したとも考えられます。

確かに、「9月のFOMCにて縮小が開始される」との観測が強まった8月中旬あたりから、米10年債利回りが短期間で2.6%台から3%台まで急騰し、金利上昇による米景気の下押し圧力が意識された場面がありました。仮に今回のFOMCで縮小が開始されれば、現在落ち着いている金利が再び上昇し始める可能性があったほか、さらに、デッドシーリング議論で米議会が揉めるようなことがあると、米国債が売られて利回り上昇に拍車がかかり、ローン金利などの高騰で米景気が悪化するというシナリオも想定可能です。

年内のFOMCは、10月(29日~30日)と12月(17日~18日)の2回を残すのみですが、今後もFOMCが近づく度に縮小実施の有無に対する観測で相場が動く状況が続くことになります。利上げの判断となるフォワードガイダンスとは異なり、縮小開始については具体的な判断条件はなく、地均しされた今回のタイミングでの縮小開始を見送ったことで、逆に今後の縮小開始の判断が読みにくくなったと言えます。バーナンキ議長は会見で、「財政の悪影響が弱まって景気回復基調となること」、「労働市場の改善が続くこと」、「物価上昇率が目標に近づくこと」の3つに注目していると述べていますが、これらはこれまでと変わらない材料です。今回のFOMCの結果は今後のマーケットを見通す上で少々厄介なものになったのかもしれません。

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