QE縮小開始後の想定シナリオ

2013/08/08

今週の国内株市場は、水曜日(7日)の日経平均が前日比で約576円下落し、今年4番目の下げ幅を見せるなど、冴えない展開となっています。注目だった米雇用統計が先週末に通過し、国内企業の決算発表もピークを超えて一巡感が出るなど材料不足の中、夏休みモードの様子見姿勢が加わり、さらに今週末のオプション取引のSQを控えた思惑が絡んで値動きが荒くなっている面がありますが、基本的には米国QE(量的金融緩和策)の縮小をめぐる米国株市場や為替市場との連動性が高まっているようです。

最近のQEの動向を振り返ってみると、先週開催されたFOMCでは、その声明文で景気認識の表現がややマイルドになった程度で目新しい進展はなく、また、雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を下回る増加人数だったこともあり、市場では「QEがしばらく継続する」との見方が強まり、NYダウが連日で過去最高値を更新する動きとなりました。ただし、今週に入ると複数の地区連銀総裁がQEの縮小実施に言及したことで、再びNYダウは下落に転じています。8月はFOMCの開催がなく、次回は9月17日~18日の予定ですが、その前にもう一度雇用統計の発表が控えており、引き続きQEの縮小観測の動向が相場を左右しそうです。

現在のところ、実際にQE縮小が開始されるのは9月もしくは12月で、QE縮小実施後の日本株市場も上昇基調継続という予想が多いようです。QEが縮小されはじめても米国経済の復調が続き、また、米長期金利の上昇による金利差で為替も円安になることもプラスという見方です。新興国にとっては、QE縮小によってこれまで流入してきた資金が引き揚げられる恐れがあり警戒されていますが、日本はアベノミクスへの期待感もあって資金が流入し続け、米国景気に引っ張られる格好になるというわけです。

ただ、一部の国内企業決算では、中国など新興国の先行き不透明感が業績の足を引っ張る可能性を指摘する動きも見られ、想定以上に新興国景気の落ち込みが日本に影響を与えるかもしれず、また、現在小康状態の欧州もこれまで米QEが終了するタイミングで不安が再燃してきた経緯があるほか、そもそもQE縮小によって米国経済が失速するケースも有り得ます。QE縮小開始後のシナリオを展望する際には、「米国金利の上昇ペース」、「米経済指標」、「新興国経済」の動向が注目ポイントとなりそうです。

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