長期金利の上昇が意味するもの
国内株市場の強さが続いています。外部要因によるリスクテイクと世界的な株高連鎖が続いていることに加え、先週末に開催されたG7財務相・中央銀行総裁会合では、直近の円安について特段の批判が出ず、円安容認と受け止められたことで、これまで届きそうで届かなかった1ドル=100円の壁を突破しました。こうした地合いの良さと円安進行のインパクトを受け、今週の国内株市場は主力輸出株を中心に買われる展開となり、日経平均は2007年12月28日以来、約5年4カ月ぶりの1万5,000円台に乗せました。
その一方で気になる動きを見せたのが債券市場です。一週間ぐらい前までは大体0.5%台後半で推移していた新発10年物国債の利回りが、先週末あたりから債券売りが多く出はじめたことで急上昇し、今週15日には一時0.920%と約1年1カ月ぶりの水準をつける場面がありました。債券の先物市場でも売買の一時停止措置(サーキット・ブレイカー)が度々発動されており、利回り上昇(債券価格の下落)が急ピッチだったことが窺えます。その後、日銀が2兆円規模の「シングルオペ」を発表してからは、ひとまず落ち着きを見せています。
こうした状況に対し、麻生財務大臣は「株高と円安によって、債券からの資金シフトが起こり、市場の判断として当然の流れ」と述べているほか、日銀の幹部からも「物価上昇率2%を目指す以上、長期金利の上昇も当然の流れだ」という発言がありました。確かに、現在の利回り(0.85%、15日時点)が大きなリスクを意識させるほどの金利水準ではないと思われます。とはいえ、長期金利の上昇が続くと、企業が資金調達を行いにくくなるのも事実です。
実際に、今月中に普通社債を発行する予定となっていたLIXILグループがその発行をいったん見送りました。その後も、JFEホールディングスやトヨタ自動織機なども社債発行の延期を発表しています。株式市場でも、これまで牽引役だった不動産セクターの株価の下げ幅が大きくなる場面があり、最近の不安定な債券市場の動きが影響を及ぼしている兆候が一部で見かけられます。
そもそも、日銀の「異次元」緩和によって描かれたシナリオは「株高、円安、金利低下」によるデフレ脱却でした。予想インフレ率に働きかけ、株高と円安を誘導することで景気の回復をサポートし、物価上昇に伴う金利の上昇を国債購入で抑え込むというリクツです。現時点では、株高と円安には成功したものの、金利についてはシナリオと反対の動きとなっています。足元の金利上昇とその水準が危険かどうかというよりも、債券市場において、日銀が想定通りにコントロールできていないことに対する不安の燻りが問題と言えます。
4月4日からさほどの月日が経っていないため、日銀の「異次元」緩和がもたらす効果を評すのはまだ早い段階ですが、少なくとも、日銀が債券市場を安定化させる手綱さばきを見せ、想定シナリオの軌道に乗せることができるかが注目されそうです。
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