安倍新政権が本格始動~焦点は短期成長から中長期成長への期待持続

2013/01/11

新しい年を迎え、いよいよ安倍新政権が本格始動しました。安倍首相は7日に開催された経済3団体の新年祝賀パーティーにおいて、金融政策・財政出動・成長戦略の「三本の矢」による政策運営を進める考えを表明しています。

国内株市場は大発会に一段高となり、その後も堅調な足取りを辿っていますが、その背景となっている新政権への期待の中身も、「何かをやってくれそう」、「今度こそ日本が変わりそう」から、「何をしてくるのか」、「日本はどう変わるのか」に変化しつつある段階にあると言えます。

直近の動きとしては、緊急経済対策と補正予算がそれぞれ11日と15日に閣議決定されます。すでに緊急経済対策の骨子や、補正予算も13兆円規模になるなどの報道がなされ、株式市場では、早くも建設や教育などをはじめとする政策関連銘柄への物色が見られています。

補正予算については2月中の国会成立を目指しており、予定通りに進めば、財政出動による景気押し上げ効果が比較的早い段階で表れてくると思われます。安倍政権に対しては経済成長によるデフレ脱却と同時に、財政再建も求められていますが、2014年の消費税引き上げの可否を今年の秋口に判断することになっているため、13兆円という規模の裏には、できるだけ大型の補正予算を組み、秋までの早い時期までに結果を出して、消費税引き上げのための地ならしをしたいという意図が感じとれます。

ただ、一方で積極的な財政出動によって、財政規律への懸念が高まる恐れがあるほか、従来型の政策ではその経済効果も短期的にとどまる可能性があるため、経済成長を短期から中長期的なものへ持続させて、経済成長が財政再建にも寄与する好循環にして行くことが重要になります。そのためには冒頭の「三本の矢」の一矢である成長戦略がカギを握ります。

安倍政権は6月までに成長戦略を策定する予定ですが、その中心となるのが8日に初会合を開いた「日本経済再生本部」です。すでに経済財政諮問会議と連携して緊急経済対策をまとめたほか、具体的かつ幅広く成長戦略を議論するために、「産業競争力会議」の立ち上げを決めました。さらに、規制改革会議と総合化学技術会議を立ち上げる方針となっていて、「総構え」の布陣です。

とはいえ、長年にわたって続いたデフレとそのマインドの解消は高いハードルです。しかも、今後の政策運営の舵取りを間違えると、「大規模な財政出動にも関わらず、景気はあまり良くならないばかりか、財政不安が高まって金利が大きく上昇、インフレだけが進行する」という危険性を内在しています。成長戦略はカギというよりも生命線になるのかもしれません。

ただし、逆を言えば成長戦略が規制緩和や構造改革、税制の見直しなどに大きく踏み込み、民間の知恵や活力、イノベーションを生みやすい環境を整えることができれば、持続的な成長期待につながり、さらに政策を支援する格好で金融緩和の効果が上乗せされれば、株価はもう一段上昇していく展開も望める状況とも言えます。

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