需給要因による株価調整に注意

2012/12/06

最近の日経平均は9,500円台から上値を伸ばしきれないものの、堅調さを維持しています。株価上昇のきっかけとなったのは、11月14日の衆議院解散表明です。その後も次期政権への経済政策と金融緩和姿勢に対する期待や、海外のポジティブ要因が加わったことによる円安の進行を背景に、トントン拍子に現在の株価水準に達した格好です。

一部では、「日経平均の年内1万円」説も出てきているようですが、その是非は別として、確かに直近の株式市場は今年2月~3月のいわゆる「バレンタイン相場」を想起させるような、相場のムード改善が感じられているのは事実です。「バレンタイン相場」では、2月14日に日銀が発表した金融緩和政策がサプライズとなり、政策効果による景気や企業業績の回復期待を先取りする格好で、「円安・株高・債券安」が同時に進行しました。

ただし、期待先行に実体経済がついて行けず、4月に入ってからの株式市場は下落トレンドに転じています。今回の株価上昇相場についても、バレンタイン相場と同様に期待先行の面があり、直近で発表された経済指標を見る限りでは、国内景気の減速感が高まっています。円安傾向が続くことによる、輸出関連企業の業績プラス期待はありますが、その円安の要因となっている政策期待そのものについて、慎重派は新政権による実現性に懐疑的な見方をしています(もちろん、選挙結果でシナリオはかなり異なってきますが)。

また、需給面にも注意が必要です。具体的には11月30日時点の裁定買い残高が2兆2,102億円となり、1年9ヶ月ぶりの水準まで積み上がっています。バレンタイン相場の時も、日経平均が今年の最高値(10,255円)をつけた3月下旬に残高が2兆円を超え、4月24日の2兆1,120億円がそのピークとなりましたが、以降は残高の解消に伴って株価が下落し続けました。過去においても、裁定買い残高が天井をつける時期に日経平均が天井となることが多く、要警戒水準にあると言えます。

では、「積み上がった裁定買い残高が解消に向かい始めるのはどのタイミングになるのか?」ですが、選挙期間中の株式相場は好調」という経験則もあるため、まずは12月16日の衆議院選挙までというのが最有力となりそうです。しかも、選挙直前の金曜日(14日)は株価指数先物取引の清算日(メジャーSQ)でもあるため、それまでに「先物売り→裁定解消売り」が出始める可能性があります。

さらに、投資部門別売買動向を見ると、直近で日本株(現物と先物)を積極的に買っていたのは外国人投資家です。11月第三週(11月19日~22日)の外国人は1年8ヵ月ぶりの大幅買い越しとなる一方、同じ週の個人投資家は売り越しでした。外国人投資家は12月の後半にはクリスマス休暇に入ることや、米国でも、FOMC(11日~12日)や、「財政の崖」問題をめぐる米国議会の期限(14日)など、日本と同様に12月中旬に重要イベントが集中しています。

そのため、年内の国内株式市場は、近いうちに需給要因による売り圧力が出てくるものと思われます。こうした売り圧力を現在の明るい相場ムードがどこまで吸収できるかが焦点になります。

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