ギリシャ支援は合意されたが、警戒感はしばらく続く

2012/11/29

ユーロ圏財務相とIMF(国際通貨基金)は、26日から27日にかけて財務相会合を開き、ギリシャに対する融資の再開や債務の削減策などについて合意しました。

「ギリシャの財政と債務の問題をどうするの?」というお題に対し、ユーロ圏財務相会合は11月に入って度々開かれ、1回目(13日)、2回目(20日)の会合では結論が出ず、今回(26日)の3回目でようやく着地点に至ったわけです。

財政の穴埋め方法や債務削減の達成目標期限をめぐって、ユーロ圏各国とIMFとの溝がなかなか埋まらなかったものの、ギリシャの資金枯渇が危ぶまれる中、「デフォルト(財政破綻)とユーロ離脱だけは何とか回避したい」という思いがギリギリのところで踏みとどまらせた格好です。

言うまでもなく、ギリシャの問題の本質にあるのは、「財政収支を黒字化」し、「積み上がった債務を減らしていく」ことです。今回の合意内容をざっくりまとめると、「目標達成期限の見直し」、「優遇措置の強化」、「止まっていた融資の再開」、の三つに分けられます。

まずは、今回の合意では財政再建や債務削減の目標達成期限が見直されました。財政収支の黒字化の目標期限が2014年から2016年に延長されたほか、債務の削減についてもその目標が対GDP比率で、2016年(175%)、2020年(124%)、2022年(110%)に再設定されました。

次に、目標達成をサポートするため、ギリシャへの融資に対する金利を引き下げるほか、返済期間も延長されました。さらに、金利の支払いも10年間にわたって猶予されるほか、ECBなどが買い入れてきたギリシャ国債から得られる利益をギリシャに返還し、財政再建に充てるなどの優遇措置が強化されました。

そして、融資の再開については、手続き等を経て12月13日に正式に承認される予定です。融資の総額は最大で437億ユーロで、段階的に行われます。とりあえず344億ユーロが融資され、その後、残りの93億ユーロが融資されることになっています。

今回の合意内容を大まかに見ると、ギリシャへの不安はかなり後退したという印象なのですが、これまで繰り返してきたギリシャ問題の経緯から得た教訓を踏まえると、今回も楽観しきれない懸念が燻っています。

その懸念のひとつが、融資の再開についてです。実は、資金の出し手であるIMFは、「ギリシャが民間債権者から債務の買い戻しを行い、それが望ましい結果になること」というのを融資の条件としています。つまり、「民間投資家から国債を安く買い取って、債務残高をある程度減らさないと融資しないよ」というわけです。そもそも、「何故こんな厄介な条件が付け加えられたのか?」ですが、結論から言うと妥協の産物になります。

IMFの主張は、「ギリシャ財政の早期再建には、ユーロ圏の各国政府や中央銀行が保有するギリシャ国債の債務減免(ヘアカット)をして、債務残高を削減することが必要」というものです。一方のユーロ圏各国は、「自国民の負担増になる債務減免には反対で、多少時間がかかっても無理のない範囲で再建させたい」という立場です。とはいえ、債務残高を削減する必要があること自体は共通認識にあるため、「買い戻し」と称した債務減免の対象が、民間投資家が保有するギリシャ国債に向かったというわけです。

とはいえ、民間投資家の立場からすると、「満期まで保有していれば額面で償還されるのに、なぜこの段階で安く買い叩かれなければならないのか?」という見解になるのが自然で、この買い戻しが順調に進むかは未知数です。そのため、少なくとも、買い戻しの実施日とされる12月12日までは、ギリシャ情勢に対して警戒感を持って望んだ方が良さそうです。ちなみに、この買い取り資金についてはギリシャに提供されることが合意されています。

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